彼女はオートボットなはずだ。
確かにマークはディセプティコンだけど、それには自分でつけたんだろうか、深い刃物の傷がマークを二つに裂いていた。
それに偉い人か誰かが来た時にはその上からシールを張ってるのを見たことある。(ラチェットが造ってくれたと彼女から聞いたこともある。)
それでも人間に素性をすべて明かしているオートボット。もちろん彼女のことだって全部知ってる。偉い人たちがそれを知ってて彼女に距離を置いてるのも僕は知ってる。
今日だってほら、さっきまでどこのかは知らないけど、偉い人は彼女の"そういうところ"ばっかり話していた。
似たことがあると彼女は決まって格納庫の隅の方で、小さい仲間たちと遊んでいる。正確に遊んでるのは小さい仲間の方で彼女は見守っているのだ。
「ねえ名前、元気出してよ」
僕がそう声をかければ
「私は元気だよ、サム」
といつも穏やかに返してくれる。今日もそうだった。
「だったら膝抱えて座ってないでみんなのところ行ったら?」
元気だったら今ここでそんなことしてないでさ
「それはできないの」
ようやくこっちを向いた名前の目はディセプティコンの赤。でも彼らと違うところはその目が優しく見えたところだ。
「でももうすぐで"オートボット"に帰れるから、待っててよ」
そういう時は決まって物事を気にしてるときだ。じゃあ次になんて言おうかなんて考えてたら名前が先に立ち上がった。
「うん、じゃあみんな行こうか」
サムも行こう、なんていつもみたいに言ってくれた。
「ほら、スチールジョーもアムホーンもじゃれてないで行こうよ」
そう言って先に名前の元に駆け寄ってきたリワインドとイジェクトと一緒に残りの二匹を急かす。
「こうなることわかってオートボットに来たんだから、私は大丈夫だよ」
僕の前に手を差し伸べてくれた。乗せてくれるんだ。僕は迷わずにその手に飛び乗った。
「でもやっぱり、たまにさびしくなっちゃうのは、許してほしいな」
僕は知ってる。
(君がすごく頑張ってること、皆ちゃんと知ってるよ)
彼女が望んでいるのはいちばん平和的な和解と、"番い"と一緒にいられる場所だ。