現在地:月の裏側、月面より100キロ上空

司令室に駆け込めばそこにはベクタープライムとマイクロンたちがいた。
急ブレーキを掛けたので随分車体は揺れたが、子供たちは出発するときと変わらぬ元気で車から降りてくる。
子供たちが降りたのを確認すると名前はロボットモードにトランスフォームする。
ワープの衝撃で処理落ちを起こしたと思われるブレインサーキットが正常ではないほど熱い。ショート寸前なのかもしれない。
その姿をカメラアイに写したベクタープライムが心配そうに声をかけた。

 「名前、大丈夫かい?随分無理をさせてしまったようだが、」

 「はい、大丈夫です!ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」

それより、と彼女はメインモニターに目をやった

 「モニターを超望遠カメラに移します!」

ホップが画面を切り替えると、そこにいたのは

 「デストロン...!」

ある程度は予測できていた事態だが、早すぎる、誰がそんなに早く奴らが来ることを予測しただろうか
子供たちはその事態に慌てている。
しかし名前は至って冷静だった。

自分の体からコードを取り出してコントロールパネルの接続部に取り付けた。
ケーブルを通して流れ込んでくる膨大な量のデータは処理落ちを起こしているブレインサーキットには正直辛い。
ショートしそうなブレインサーキットを気遣いながら唇を噛み締めてメインモニターを見た。

 「あの人たちを、迎撃します!」

目の前にある半球体のコントローラーに手を乗せた
すると司令室のライトが一気に消えた。次に点灯したライトは薄気味悪い紫色をしていた。
メインモニターには古代トランスフォーマー文字と思わしき文字列

 「この戦艦はすぐにアサルトモードに移行します。あの人たちを止めるいい時間稼ぎにはなるでしょう」

 「時間稼ぎ?」

 「ローリ、この船の中にチップスクエアは必ずあります。」

それをみんなで探すんです。
やさしく微笑む彼女の言葉にベクタープライムは頷く。
しかしローリの心配はそこではない。

 「名前は?ここでどうするの?」

 「私はここであの人たちを迎撃して動きを見ます。何かあればベクタープライムさんにすぐに連絡します。」

それはとてつもない危険が伴うこと、この場の誰もが知っていた
でもそれに対して反論している時間がないことも、知っていた

 「私の仕事は、みんなを後ろから支えることです」

それが艦内で会話した彼女の最後の言葉だった
ローリは未だやさしく微笑む彼女に後ろ髪惹かれる思いでいる。
コビーとバドに背中を押されたローリはベクタープライムの後に続いて、司令室を出ていく

堅く頑丈な扉が音を立てて閉まると、名前はその場に倒れ込んだ
窓の外の宇宙では数々の爆音が聞こえてくる。
どうやら"自動迎撃システム"は正常に動いているようだ。

 「...あ、はは...簡単に騙されてくれた...」

苦しそうに表情を歪めながら彼女は笑っていた

  (私のブレインサーキットはワープに耐えられなかった。)
  (だから今こうして、ショート寸前なの。)
  (処理落ちの起きてるところに、いっぱい古代文字を取りこんだのもいけなかったと、思うけど、)
  (そうしないと"私"のバックアップ、残せないんだもの。)
  (きっとこの戦いが終わったら、バックパックが気付いてくれて回収してくれるはず。)
  (大丈夫、バックパックは私と同じ性格だから、同じことすると思うから、気付いてくれるはず。)

  (そしたら、また、エクシィに会える。)


後戻りはできない
わたしはみんなのためになにかできましたか?


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