ずっと一緒だった。
コンマ単位一緒に目を覚まして、嬉しくなってすぐに愛称で呼び合った、自分たちしか使わない特別な愛称
それを提案したのは"彼"だ。彼女"はそれを拒否することはなかった。
似通わない外見、似通わない性能、似通わない構造、似通わない思考、似通ったカラーリング
周りは似ない二人を笑いながら見るがそんなことは心底どうでもよかった。
なんと言われようとコンマ単位で一緒に目を覚ました二人は、世間一般的に"双子"と呼ばれる部類に属しているのだから。


"彼女"は先に伸びる廊下を走っている
カメラアイは常のそれより輝いて見えた
少し先に曲がり角が見えた。その曲がり角から同じ部隊のトランスフォーマーが二人姿を表した。何やら楽しそうに雑談をしているようだ。
それをみた"彼女"は一瞬カメラアイのライトを点滅させて走るスピードを下げていく

 「ん?なんだよ、誰かと思ったら名前じゃねぇか」

 「前線に出ないお前がこんなところで何してるんだ?」

彼らに話しかけられた時にはもうすでにスピードはゼロ。停止状態だった。
俯いた顔、ただでさえ他のトランスフォーマーよりも少しばかり小さい体をさらに縮めている
彼らの片方がそういえば、と少し考え込むような仕草を見せた

 「もうすぐエクシリオンのいる部隊帰ってくるよな」

 「で、お出迎えかい?本当あいついないと何もできないよな、お前」

頭の上から笑い声が聞こえる。
込み上げてくるものを抑え込むように両手に力を入れて、歯を食いしばった
"いつもみたいに私が我慢すればいいんだ"
気が済んで彼らが去るのをただひたすらに待ち続ける。
しかし今日は少し違った展開になったようだ。

 「おまえら」

聞き慣れた声に顔を上げた
頭の上で笑っていた彼らは後方から聞こえたその声に振り返った
そこにいたのは今しがた話題の中心にいた"彼"だった
"彼"の姿を確認した"彼女"は再びカメラアイを輝かせる

 「うちのマクシィになんかあるのか?」

こちらに歩み寄ってくる"彼"。
前方に見える輩には目もくれず一直線に"彼女"で止まった。
そしてすぐに自分よりもずっと細い"彼女"の腕を掴んでまた歩みだす。
背丈は同じはずなのに合わない歩幅、腕を引かれる"彼女"は前に倒れそうになりながら"彼"の背中を見つめた。
すると"彼"は"彼女"の腕を離して急に歩みを止めて振り返った。
周りから見れば二人の距離は決して程よいものとはいえない。
でも関係ない、二人にとってそれはいつもだから。

 「マクシィ、ありがとな」

 「なにが?」

 「さっきの通信だよ」

あれなかったら今頃宇宙の藻屑だった、なんて"彼"ははにかんだ
それを聞いて"彼"の役に立てたことを認識した"彼女"はつられるようにカメラアイを細めて笑った

 「マクシィ、これから総司令官に報告しに行かなきゃいけないんだ。」

ちょっと顔を俯けた"彼"
さっきまで腕を掴んでいた"彼"の手を"彼女"が両手で包んだ。
ゆっくり顔を上げれば優しく笑う"彼女"がいた。

 「あともうちょっとで終わるじゃない。頑張って」

励まし、"彼"の手を包んでいた手を離せば納得したように強く頷いた
おう!とガッツポーズを見せて司令室まで走っていってしまった
"彼女"はしばらくして帰ってくるであろう"彼"が聞かせてくれる今回の出撃の話にブレインサーキットを高ぶらせながら長い廊下を歩き出した


うちの子に何か御用ですか
"彼"はエクシリオン、
"彼女"は名前、
世間一般的に"双子"と呼ばれる部類に属しています


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