男として、彼女持ちとして、あいつはどうかと思うのが正直なところ。

今も身内でドンパチしてる緑色のやつをみる。人気のない岩場だって言ったってこれだけ騒音出されたらたまったもんじゃない。うるさい。
顔をしかめさせながら顔をあげると彼女は何をするでもなく繰り広げられる争いを見つめていた。

前から気になっていたのだが、名前は一体どういう手を使ってあの緑を捕まえたのだろうか。
二人の仲は見てるこっちが砂糖吐き出したいぐらいだ。まあ"俺たち"の仲も負けてないけどな。


「なあ、君はあいつのどこが好きなんだい?」


だから聞いてみた。
俺の声が聞こえたのだろう。名前は俺を見た。硝子が光を反射したみたいな色した瞳からじゃ何もわからない。だが口を開いた。


「私のこと、信じてくれるところ...」


音量が小さかっただけで迷いはなかった。


「クロスヘアーズ、短気なの知ってるよ。すぐ乱暴するし、口も悪いし、好き嫌いもすっごく激しいの。でもそんなクロスヘアーズが、私のこと、信じて待ってくれているの。」

名前がほんの少しだけ笑った。
ああ、この子は本当にあいつが好きなんだなって。


「それがね、すごく嬉しいの。だから離れたくないし、どこにも行ってほしくない。」


少しだけ顔を俯けた。俺のほうが小さいから俯いたその表情を覗くことができた。
彼女があの緑を落とした手段がようやくわかった。そんな顔するからあいつは君を放っておけないのだ。
ほんの少しだけ変わった表情をみてそう納得した。
だ俺もそんな彼女を放って置けそうにない。決して浮気ではない。


「絶対大丈夫だって。もしどっかに行ったら俺が捕まえてきてやるから。」


そんな事態はきっと起きないだろうけど。それは心の奥にしまっておく。
彼女は俯きながらも瞳の輝きを少し取り戻していた。本当に少しだけど。
そういう小さな変化に気付けるようになれるって、勝手だが俺も彼女に近づけたなって思うわけで。


「じゃあそのと時は、期待してるね」

「まかせとけって」


名前が笑ってくれた。つられて俺も笑う。
彼女が顔を上げ、未だ騒音をたてているあいつらをみた。
俺もやつらをみると、気のせいだろうか、噂の緑色のやつと目があっている。
なんかやらかしただろうか、といろいろ考えているとあいつは悪い笑みを一瞬見せてまた騒音をたてにいった。
その笑みの意味がわからず呆気にとられていたが、よくよく考えればあいつらは人間じゃないんだ。

つまりさっきの会話を騒音の中拾って、上機嫌になっているというわけだ。
これは、しばらく俺の出番はなさそうな雰囲気だな。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -