黄色と青が取っ組み合ってる。青が優勢だろうか。どんなに経験を積んでも黄色はまだまだひよっこだ。あのつぶらな瞳に騙されてはいけない。
正直見飽きた光景だ。
後ろでは他二体が煽って取っ組み合いを激化させている。
そんな血気盛んな奴らと正反対に"彼女"は一つため息をこぼすのだった。
「いつもああなの。飽きないのかしらね。」
「"男の子"ってそういうものよ...。いつまでたっても子どもなの。」
独り言のつもりで零した言葉が拾われた。
言葉を返してきたほうを見やればそこには人間がいた。
「...人間もそうなの?」
「ええ。あんなに過激じゃないけれどね。」
そう言った直後爆撃音が聞こえた。
どうやら黄色が発砲したらしい。青がそれを避けてしまったので岩がえぐれている。
「何が楽しくてあんなことやってるのか、私には理解できない。」
「私も同じこと思ってる。」
止める気はまったくない。
最早戦場と化したあの場所に自ら突っ込めば確実に五体満足で帰って来れないから。経験済みだ。
単に痛い思いをするのが嫌だった。
「でもね、楽しんでる彼を見てるのは、すごく好き。」
「...それってもしかして」
視線の先には相変わらず黄色を煽る緑。
それを見つめる瞳に変化は見られないが、少なくとも輝きは失っていなかった。
人間が思うに。
「"女の子"もそういうものよね」
大して変わりはないと思い独り言のつもりで零す。
その瞬間頭上を巨大な何かが通り過ぎた。
反射的に頭を抱えその場にうずくまる。恐れていた衝撃や音はない。その代わり鉄と鉄がぶつかっている音が聞こえた。繰り広げられていた取っ組み合いとは違う音。
恐る恐る顔を上げてみれば、そこには、緑に肩を抱かれた"赤"。
「そう"女"!俺の"女"な!」
緑は満足そうに言い放った。
その声というより言葉に未だしゃがみこんだまま呆気にとられる。それは黄色も青も老兵も同じだった。武器を構えたまま見事に静止。少し離れたところで言いあっていた親と義息子も言葉を失っていた。
黄色がラジオをつけるとノイズが聞こえた。
「"全く" "貴様には!" "もったいないな"」
「言ったなクソチビ!その頭ぶち抜いてやるよ!!」
緑が赤をの肩から手を離すと武器を取り出し即発砲。弾頭は黄色だけでなく青にも老兵にも向いていた。黄色の発砲なんか比べものにならないぐらいには悲惨なことになっていた。
「いつもああなの。飽きないのかしらね。」
赤は動じない。
だけれどそれはもう独り言ではなかった。
「でもね、私ね、そういう"男"が好きみたいなの。」
満更でもないように笑って見せた。
ああやっぱり、
「私も、あなたみたいな"女の子"、すごく好きよ。」
"女の子"は愛されるものだ。