平腹とはぐれた狭間の廃病院で彼女と出会った。

彼女と共にいた時間はどこか懐かしく、楽しかった。だから何度も抜けだして彼女と会った。

彼女は優しかった。
目を抉ろうとの迫ってきたときは悪夢でも見せられているのではないかと思った。
次に目を覚ましたときにはもう彼女の姿はなく、窓に写る右目には似紫の眼球がいた。


「...ああ、だからあんなに怯えてたんだね」


佐疫は祈梨のそばまで行き、慰めるようにその肩に腕を回した。
田噛と平腹が祈梨の目玉を抉ろうとしたときの怯えようにようやく合点がいった。
あれは信じてるものに裏切られる絶望感からくるものだ。


「でもさー、亡者も祈梨の目玉取ってどうすんだろうねー」

「さあね。それがわかったら俺の目玉を抉った理由も教えてほしいなぁ」


平腹の疑問に木舌は曖昧に笑った。
そう、理由がわからないのだ。
抉るだけなら木舌も苦痛を味わっている。だが空いたそこに新たな目玉を入れる訳はわからない。


「それも含めてこの亡者を捕まえてくればわかるんじゃないか?」


斬島が写真を指差し言い放つ。
誰もがその単純明快な答えに呆気にとられたが、正にその通りだった。


「あははぁ、その通りだね!平腹が受けた任務だし、一緒に片付けちゃおうか!」


木舌が祈梨に笑いかけた。いつもの見ていて安心する笑い顔だ。
それに釣られて祈梨も少しだけ笑った。

これでとりあえずは大丈夫だね。と笑いかけてくれた佐疫の言葉に頷いた。
ほんの少しだけ肩の荷が下りた。

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