「あー!!ここだここ!!」
平腹は相変わらず喧しい、と思いながら面倒くさそうに顔を上げればそこには噂の廃病院が建っていた。
「またはぐれたら祈梨の二の舞いだ。絶対にはぐれるな。」
「斬島こそ!迷子になるなよ!」
こいつ絶対わかっていない。
注意を促した斬島も、気怠そうにそれを眺めていた田噛も同じことを思った。
行ったそばから一人先に入ろうとする平腹を追う形で二人も廃病院に足を踏み入れた。
中は荒れ放題、ということもなく人と灯りがないだけで普通の病院だ。
前に一度来たことがあって慣れているのか、平腹は尚も進もうとする。田噛はその首根っこを掴んだ。
「なにすんだよ田噛ー。先行けないじゃん」
「っるせー。黙ってついてくればいいんだよ。」
平腹は田噛に任せておけばはぐれることはないと斬島は受付の横に設置されていた建物の地図を眺めた。
建物自体はそれほど大きくはない。一階は外来、二階三階が入院室になっている。
入ってくるときに見上げた病室の外観を思い出した。建物内からは想像つかないほど寂れていた。
果たしてそれは強い妖力のせいか祈梨の目玉を奪ったという亡者のせいか。
それを知るためにもまずは調べなければ始まらない。
まずは平腹に祈梨とはぐれた場所、合流した場所諸々聞かなくては。
「平腹、祈梨とはどこで...」
はぐれたんだ。と聞こうと振り返る、が、そこには平腹どころか田噛までいなかった。
斬島はここで最大のミスを犯したと後悔する。平腹と田噛ははぐれることがないだろうけども、その二人と自分がはぐれる可能性を考えていなかったのだ。