事の次第をどこも抜けることなく佐疫は肋角に報告した。
報告を受けた肋角は表情を変えることがなかった。普段と変わらず椅子に座り机に腕を乗せただ報告を聞いていた。
「...そうか」
ひと通り聞き終わると一言そう言った。
まるでこの人はこうなることが初めからわかっていたようだ。佐疫の隣で様子を見ていた木舌は思った。
「斬島たちが亡者を捕らえに行ったのなら直に騒動も収まるだろう。祈梨の弁明はその後聞こう。」
この人もやはり原因は彼女にないと暗に言っている。
とにもかくにも祈梨に救済処置がとられたことに安堵して佐疫と木舌は顔を見合って少しばかり笑った。
あとは斬島たちが亡者を捕まえて事情を聞き出して祈梨の目玉を返してもらえばいい。
腕に自信のある斬島を筆頭に平腹と田噛が一緒なのだから特に心配も不要だろう。田噛はやるときはやる男だ。
「ところでその祈梨はどうしている?」
「谷裂に預けてます。そのほうが祈梨もいいと思って。」
木舌が言うと、肋角はそこで初めて表情を変える。何かを考え込むように。
この人はすべて知っている。佐疫も木舌と同じことを考えていた。
「肋角さんは、どうしたらいいと思いますか...?」
この人なら最善を尽くしてくれると思った。だから逆に聞いてみた。この人の口から出る、彼女にとっての最善を。
佐疫の問いに間を置くと、肋角は口を開く。
扉の外が騒々しくなったのはちょうどその時だった。