家に着く頃にはもう外は真っ暗だった。
今日も帰ったら娘が晩御飯を作って待っていてくれるのかと思うと申し訳なくなってくる。それに今朝、部活が休みだと話していたのを思い出すと尚更。年頃だし友達と遊びにも行きたいだろうに。
ため息をつくと家はもう目の前だった。こぼれる光が少し強い気がする。それに聞いたことのある声も聞こえる。あれは確か部活の友達だっただろうか。


「...お母さん?」


ふと顔を上げると向こうから歩いてくる人影が見えた。暗くて最初はわからなかったけどよく見ればそれは娘のなまえだった。それに隣に住んでる寛くんも一緒。私をみて小さくおじぎした。


「どうしたの、こんな時間に外に出て」

「ごめんなさい、今永四郎くん家にいるし、寛くんが一緒だから」


語尾がどんどん小さくなって、顔を俯けてしまった。
永四郎くんとは、以前家に来た眼鏡をかけたしっかりした子だ。娘が言うに今家の留守を守っているのは彼なのだろう。その彼に留守を任せ、寛くんを連れてどこに行っていたのだろうか。だがよく見ると二人はその手に荷物を持っていた。見覚えのある袋は少し離れたところにある大きいスーパーの袋。


「夜ごはんまだだから、みんなも家で食べてけばいいかなって。...あ、今みんな来てるんだけど」


ということは家には娘の部活の友人がみんな集まっているということだろう。私がよく家を空けてるから集まるにはちょうどいいのを知っていた。
要は私がいない間に家に集まった友人たちだが気付いたら遅くになってしまったからうちで晩御飯を食べて行けばいいじゃないか、ということなのだろう。申し訳なさそうにしているのは、私がいないうちに勝手したことを悪いことだったと思っているからか。娘より大きな袋を持つ寛くんも心なしか不安げな表情で私と娘を交互に見やる。


「...じゃあ早く準備しなくちゃね」


そう笑いかけると娘は目を丸くした。寛くんも小さく息をはいた。
今更とやかくいうつもりはなかった。というより普段何もしてやれていないのだからこれくらい許してあげてもいいじゃないか。

一足先に家へ向かう私が玄関を開けると娘が帰ってきたのかと思っていた子たちが集まってくるが、私を見るなり威勢をなくし固まってしまう。


「うちのご飯でいいなら、食べていってちょうだい」


そういえばある子は満面の笑みを作り、ある子は申し訳なさそうにこちらに頭を下げた。

後からきた娘と寛くんと一緒に台所に向かう途中、彼らがいたであろう居間を覗くとそのテーブルにはなぜかゴーヤーが数本のっていた。うちでゴーヤーは育てていないのになぜそこにあるのか、疑問に思ったがそれより先に寛くんがそれを持ってこちらに来た。


「これで裕次郎たちに仕返しするさ」


だがその意図はわからない。娘は何故か顔を青くさせている。
よくわからないが、寛くんが持ってきたそれも使って、晩御飯を作ろうと私は袖をまくった。後に待つ戦争なんて知りもしないで。

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