知念が自ら行動を起こし、なまえのクラスに出向いたのは一限が終わった直後のこと。
その彼が見たのは普段の笑顔が絶えない彼女から想像ができないほど無気力に俯く姿だった。
同じクラスの木手の姿は見当たらない。先生に呼ばれたか、或いは問題児の制裁に出向いたかはわからない。ただ彼が気付いていれば彼女は今こうしていることはなかったと思う。

知念は俯く彼女の前の今は誰もいないその席に座った。それに彼女は気が付かない。


「なまえ」


名を呼べば、ゆっくりと顔を上げて知念を見上げる。
なまえは知念を確認すると口を開き何かを言おうとした。それをさせまいと知念が先に言葉を発した。


「なまえのことはわんが一番知ってるしそれは変わらんと思う。今なまえが悩んでる訳をわんは知ってる。永四郎も凛もそれだけは知らんはずよ。うちなーに来た時から見てきたんだからわからんはずない。もう前みたいに誰もいないわけじゃねーらん。わんはちゃんといる。だからなまえもいて。だから、だから」


饒舌な知念を目の当たりにしてなまえは口を開けたまま目を少しだけ見開いた。未だかつて彼がここまで言葉を紡いだことがあっただろうか。

一人気まずそうに目を泳がせていた知念が小さく息をはく。
改めて見るなまえは驚いた顔のまま知念を見上げたまま。

そして周りの雑音に紛れる程度の音量でようやっと口にした。


「わんと付き合って」


出会ったときから願いを叶える魔法の言葉を。

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