腹を満たして眠ってしまったなまえをおぶって家まで歩く。
途中まで凛が自転車に荷物を乗せてくれていたから楽だったけど、その凛もさっきの分かれ道で別れたばかり。
「なまえ、家着くさあ」
返事がない。爆睡である。
でも別にそれを厄介だとか面倒だとか思わない。きっと後にも先にもそう思えるのはなまえだけ。
頭のいいなまえのことだからそのことにも気付いるんだろう。その上で甘えてくるにだから多少自惚れてもいいんだと思う。
遠くに見えてきたなまえの家の電気はついてない。するとおばさんはまだ帰ってきてないんだろう。じゃあ、きょうはなまえの家に泊まってこう。なまえだって、目が覚めて一人なのは寂しいだろうから。自分の家には彼女の家の電話を借りて後から電話すればいい。
こっちに引っ越してきたときからあの家にはなまえとおばさんしかいなかった。おばさんも忙しい人だから、なまえはあの家でその帰りを待つことが多かったのを知ってる。
対象的に自分の家は下の子たちがいて賑やかだから留守番してるなまえを誘って晩御飯を一緒に食べたのは一度や二度だけじゃない。
けど慣れない土地で誰にも迷惑かけまいと振る舞うのを見てて、逃げるところになれればいいと思ったのは、いつのことだったろう。
「明日ぬことは、明日考えるやさ。」
そういえば明日は授業がなくても部活がある。支障があればまた永四郎にどやされる。
なんて考えたがそれも億劫になってきた。
とりあえず今は、なまえが甘えてくる現状に、非常に満足にしていた。