ピーンポーン
インターホンが鳴って、熱斗くんたちの声した。


「なまえ!ライカ!迎えにきたぞー!」


才葉シティが爆発に巻き込まれてしまったので、おじさんと一緒に秋原町に引っ越してくることになった。どうやらおじさんは私たちとシャーロに帰らずに秋原町に残るそうだ。この街には熱斗くんのお父さん、光博士がいるからね。と科学者らしい答えだった。
一方、私とライカは明日帰国だ。どうやら今回の一連の事件、私がニホンに来るところから既には始まっていたらしく、WWWに買収されたある軍人がジェミニマンの能力を知り上層部を動かして私をニホンに行くように仕込んだそうだ。でもその軍人に動かされた上層部が私のこと目ざわりだって思っていたことには変わりなく、その辺も以後評議されるそうだ。


「コジローたちが秋原町にいるのも変だけど、なまえとライカが秋原町にいるっていうのも相当変だよな」

「そうだね、いつも会うのは科学省だったもんね」

「まあそれも今日までだがな。」

「えっ、なまえたちシャーロに帰っちゃうのか?!」

「...言ってなかったのか?」

「なんだか言うタイミングが見当たらなくて...」

「...じゃあ帰る前に俺とネットバトルだ!」


ライカがため息をもらしているのを余所に熱斗くんがPETを取りだしてきた。そういえばジェミニマンとロックマンの対戦は決着がついていないままだ。ジェミニマンもそのことを悔やんでいたし、ちょうどいいかもしれない。
そんなとき、向こうから見覚えのある髪型の男の子がやってきた。あれは炎山くんだ。なんでこんなところに炎山くんが、と思いライカを見ると俺が呼んだという顔をしていた。さすがライカだ。


「炎山くんも今日卒業式だったんでしょ?」

「...まあな。」

「ライカに呼ばれたみたいだけど、よく素直に応えたね」

「メールで伝えたら直接伝えに来いと返されたから、仕方なく来たんだ」


ワイリーが目を覚ましたそうだ。今は取り調べ中だけれど、素直に応じているようだ。


「それとなまえ、お前に"ありがとう"と...」


あのワイリーからそんな言葉が聞けるとは思っていなかった。でも、彼も変わったんだ。それが素直に嬉しかった。私たちが伝えた気持ちは無駄ではなかった。
そう、きっとワイリーの心にも"アイリスちゃん"が帰ってきたんだ。


「ところでみんなは、中学校はどこに行くの?」


目の前にいる彼等はもうすぐ中学生だ。年が違うのは私とライカだけ。私たちと違ってまだ未来を決めることが出来る彼等は、これから一体どうなるんだろう。
熱斗くん、メイルちゃん、デカオくんはこの街の中学校デンサン中学校。やいとちゃんはデンサン女学院に入るそうだ。学校は違うけれど家は近いからすぐに会える。コジローくんと明日太くんは才葉学園中等部、あの学校は高校までエスカレーター式だったから。
炎山くんはというと、アメロッパの大学に行くそうだ。だ、大学と最初は疑ったが高校までのカリキュラムはすべて終わらせてあるらしい。頭もいいし、ニホンのオフィシャルで多忙の中カリキュラムを終了させた炎山くんはエリート中のエリートなんだと再確認した。

その後炎山くんは国際ネットバトラーの資格を取り全国で活躍したいそうだ。熱斗くんは科学省に入り、ネットワークの研究をするそう、お父さんの後を継ぐということだ。うん、熱斗くんならできるよ絶対。
張り合ったデカオくんが秋原町の町長になると宣言、明日太くんは実家のお店を全国チェーンにしたいと、やいとちゃんはお父さんの会社を継ぎもっと大きくしたい、コジローくんは先生になりたいそうだ。きっとマッハ先生みたいな私たちを愛してくれたいい先生になれるよ。
メイルちゃんはまだ具体的には決まっていないけれど、勉強をたくさんしてやりたいことを見つけたいそうだ。でも熱斗くんのほうをちらちら見ている。ということは、そういうことなんだろう。


「...なまえちゃんたちは?」


メイルちゃんが私とライカに問いかける。私が悩んでいると先にライカが答えた。
ライカは現状に満足しているそうだ。けれどもしこの先目指したいものがはっきりしてきたらそれを目指したい、と目を輝かせていた。やっぱり軍人をしていてもライカも年相応の夢見る男の子だということだ。


「最後はなまえちゃん!」

「私...。私は...ライカにお嫁さんにしてもらおうかな」


なんちゃって。
冗談のつもりでいったのに、隣りからは息の詰まる音が聞こえた。みんなを見ると口を締めるのを忘れて私を見ている。あの炎山くんまでもが。メイルちゃんにいたっては先を越された、と聞こえた気がした。やっぱりそういうことだったんだね。
それを見てジェミニマンがPETの中で大爆笑したり、固まったままのライカをサーチマンが必死に引き戻そうとしているとみんな吹き出し、気まずい空気が一気に笑いに変わった。


「...あ、そうだなまえ!なんかでかい卒業祝いもらってたけど、あれ何だったんだ?」


みんなあれが気になっている様子だ。そりゃあんな大きい物もらってライカと二人で家まで持って帰って来たのだ。目立ってもおかしくない。
うん、みんなを驚かせるにはいいかもしれない。ライカと顔を見合わせて、頷いた。


「じゃあ、ちょっと待っててね!」


そう言って家の中で準備に取り掛かった。みんなどんな反応を見せるか今から楽しみだ。


ガチャリ
扉を開けるとみんなは変わらずそこで待っていてくれた。外に出てライカと並んで玄関の横に立つ。


「じゃあ、行くよ!...ジャーン!!」


先程打ち合わせした通り、その言葉を合図に扉が開いた。


『みんな、卒業おめでとう!』

『おめでとうございます』

「改めて紹介します。ジェミニマンとサーチマンです!」


そう、バレルさんが私たちにくれたのは二体のコピーロイド。片方はアイリスちゃんが使っていたもの、もう片方はスカイタウンでカーネルが私の前に現れた時のもの。
同じ軍人でありながら全く別の道をいったバレルさんがくれた、大切なコピーロイド。片方に関しては私の命を狙った曰く付きのものだが、現実世界でアイリスちゃんと接触したときカーネルが使っていたものだと考えるとなんだか切なくなってくる。
大丈夫、二人はきっとどこかで私たちのこと見守っているはずだから。


「...さて、なまえの卒業祝いも見たことだし、みんなで卒業記念にインターネットに行こうぜ!!」


近くの公園の電脳にプラグインしようとみんで公園に来た。ジェミニマンとサーチマンはコピーロイドのまま現実世界を歩き、電脳世界では味わえない新鮮さを味わったことだろう。
彼等がこの街を歩くのが今日が最初で最後であるように私とライカもみんなでプラグインするのは今日限り。少し寂しいが、今は今を楽しもう。

例えそれが最初から最後まで陰謀だったしても、ニホンに来れてよかった。みんなに会えてよかった。たくさん思い出が出来てよかった。嬉しくて仕方ない。卒業式の時に止まったはずの涙がまたこぼれそうだ。それに気付いたライカが優しく頭を撫でてくれた。


「泣くことはないだろ。確かに俺たちはシャーロに帰るけど、熱斗たちが友達だってことは変わらない。なあ、熱斗」

「ああ、そうだぜなまえ!俺たちずっと友達だからな!!」


「あたぼうよ!」

「当然じゃない!」

「ずっとね!」

「お前たちをコテンパンにするまでは付き合ってやるぜ」

「ハイッス!」

「...あぁ!」


「行こう、なまえ」

「うんっ!」


「プラグイン!!ジェミニマン.EXE、トランスミッション!」

「プラグイン!!サーチマン.EXE、トランスミッション!」


みんなといる楽しさをもらった。みんなを守る勇気をもらった。一人じゃないという愛情をもらった。
ありがとう。私にいろんなものをくれて、本当にありがとう。
これから別々の道を進むことになるけれど、私たちは繋がってるんだね。世界を巡るネットワークで、心を繋ぐ絆で繋がっている。

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