電脳重を失ったコピーロイドたちが爆発を始めた。
ワイリーは諦めがついたように、力なく笑っている。


「なまえ。お前の、お前たちの勝ちじゃ。早くここから避難するがよい。この爆発がフォースプログラムに到達すると、大爆発を引き起こす」


爆発が起きたらこの建物がまずもたない。俺たちはここに生き埋められてしまう。だがただでは逃げるわけにはいかない。


「ワイリー!あなたも一緒に逃げるのよ!」

「...情けなど無用じゃ。ワシが生き延びてなんになるというのじゃ。生き恥をさらせというのか?!」

「ああ、そうだ!お前は生きて罪を償わなきゃならいない!なまえをこの事件に巻き込んだお前を俺は許さないが、ここで死んだらもっと許さない!死んで終わりだと思うな!!」


それに今までの事件で傷ついた人やナビのためにも、それにアイリスやカーネルのためにも生きなくてはいけない。
爆発はだんだん激しくなっていく。その中で平然と立っているワイリーは、やはり死んで詫びようとしているのか。それともすべてを失った悲しみに打ちひしがれているのか。


「なぜ、こんなに悲しいのじゃろうな...ワシは自らの野望を叶えるためにあらゆる犠牲をいとわずに研究に没頭してきた。カーネルとアイリスを切り離したとき、ワシも自分の"優しさ"の感情を捨て去ったと思っていたのにな...」

「...それはあなたの中にまだ"優しさ"が残っていたから。」


これから先どれだけ科学が発展したとしても俺たちが"感情"という概念を捨て去ることはできないだろう。そう、俺たちが"人間"である限り。


「もし本当に"優しさ"を捨てたなら、カーネルからプログラムを切り離した時に、すぐにデリートしていたはず。」

「そ、そんなはずは...!」

「あなたは自分の罪を一番理解している。だったら遅くはない。罪を償って、今度はみんなの役に立てる研究を、したいとは思いませんか?」


彼が一番切り離したかった"優しさ"と言う感情。なまえはその"優しさ"の塊みたいなものだ。じゃなかったら今まで散々自分を殺そうとしてきた相手に手を差し伸べることはできない。そうすることができるなまえは、本当に強い奴だ。


「...一瞬じゃがいい夢を見せてもらったわい」


ワイリーが静かに目を閉じた。

爆発はさらに激しさを増した。これはフォースプログラムが暴走を始めたということだろう。このままでは俺もなまえも、ワイリーも助からない。ここは彼を無理に連れて行くしかないかと一歩踏み出した時だった。

グイッ!!
襟を掴まれ後ろに強く引かれる。
体が、宙に浮いている。
何がなんだかわからないまま俺は床に叩きつけられた。
急いで体を起こせば、今度はなまえが降ってくる。


「うぉっ!」

「きゃっ」


なんとか受け止めて前を見れば、今まで俺たちが立っていた場所に、バレルさんが立っていた。
俺たちを投げたのは、この人だ。手負いのその体で俺たちを投げるなんて、さすがだと素直に思ったがそれどころではない。


「...お前たちは行け。帰るべき場所があるだろう...」


振り返ると出口はすぐそこだ。バレルさんは暗に俺たちに逃げろと言っている。
爆発はさっきよりも比べ物にならないぐらいの規模になってきている。ここで彼の意志を汲み取らないのは、軍人として彼に恥をかかせることになる。

なまえを立たせ、俺も立ち上がり、再びその手をとる。
出口に向かって歩きだそうとする俺とは対照的になまえはそこにとどまろうとする。


「バレルさん!カーネルが言ってました、"私は電脳獣と共に消える。しかしこれは運命などではなく私の意志だ"って!」

「なまえ!限界だ、行くぞ!!」


強く手を引けばなまえも走りだす。俺たちは振り返らずただ走った。

万博会場を脱出すると、熱斗たちが俺たちを心配してそこで待っていてくれた。彼等と合流した途端、大きな爆発音と爆風が俺たちに襲いかかった。

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