なんとか万博会場を脱出して、学校に逃げ込んだ。だが廊下にもコピーロイドが徘徊しているようで下手に動けない。
「...これからどうする。街はコピーロイドだらけだぞ」
「まさかあそこまで量産していたとはな...。あの数を相手に正面突破は身を滅ぼすだけだ...」
どうやらあの数は炎山も予想していなかったようだ。あれはそう簡単に量産できるものではないのだから仕方ないともいえる。
だがどうにかして突破しなければ捕まったコジローたちを助けられない。
ガタン!!
突然教室の扉が開いた。
『みぇつけたぁぞぉ!』
入ってきたのは両手で数える規模のコピーロイドたち。もう俺たちのことを嗅ぎつけてきたのか。
この数はまずい。抜けられない数ではないが、苦戦は強いられるだろう。
『なまえ...抹殺する...』
こいつ等の狙いは電脳獣を抱えるジェミニマンだ。手に入れるのに一番邪魔な存在はオペレーターであるなまえ。ネットバトルでは勝ち目があるかもしれないが、肉弾戦になるとなまえの勝ち目はゼロだ。
あからさまな殺気に当てられて怯える彼女を後ろに隠し、俺と熱斗と炎山はなんとかコピーロイドたちから抜け出そうと身構えた。
ガタン!!
この時また扉が開く。
『俺たちのナカマが来たみたいだ...もう逃げられない...』
万事休すか、と開いた扉の方を見るとそこに立っていたのはコピーロイドではなかった。
『ゲッ、お前は...!』
「ど根性アターック!!」
すごい音がした。到底人が出せるような音ではなかったが、コピーロイドたちは一瞬にして床に倒れた。
そのネーミングセンスはどうかと思うが、その強さは本物だった。
「ふん!俺の生徒に手を出す奴は許さん!」
「せ、先生!!」
そう、彼は幾度となく俺たちを助けてくれたなまえの担任。彼はWWWの一員だが愛する生徒のためなら力を惜しまない。なまえは本当にいい人に巡り合ったと思う。
「安心しろ、もう大丈夫だぞ!」
「ありがとう、先生!本当にありがとう!!」
笑顔になるなまえとは対照的に彼の顔は曇る。こうやってコピーロイドがなまえを狙っているということがどういう意味なのか、彼もわかっているのだ。
「ワイリー博士が動き出したようだな...。...ついにあの計画が発動するのか」
「あの計画...?先生、ワイリーも言ってたけど、ワイリーはその計画で何をしようとしてるの?」
「ワイリー博士は...」
彼がそこまで口にすると外で物音がした。今の騒動を嗅ぎつけて増援が来たみたいだ。もう悠長に話してはいられない。
「私が奴らを引き付ける!君たちはその隙にここを離れるんだ!」
「でも、先生...!」
「なまえ、頼みたいことがある」
「...私に?」
「バレルをとめてくれ」
校長室に万博会場へと繋がる隠し通路がある。
彼はそれだけ言い残し教室から飛び出した。するとコピーロイドたちが彼の後を追って教室から離れていく。この辺り一帯にコピーロイドはいなくなったようだ。
「...行ったみたいだな」
「...。」
「なまえ、考えるのはあとだ。お前は頼まれたんだろう?」
「...そうだけど、」
「それに彼は俺たちよりもずっと強い。大丈夫だ。」
なまえは頷いた。無理にやらせたみたいで心苦しいが、今は仕方ない。全部終わったら泣きごとでもなんでも聞いてやる。
今は彼の言っていた校長室からの隠し通路で万博会場へ向かわなくてはいけない。
先に行き外の様子を窺う炎山と熱斗、どうやらコピーロイドは見当たらないようだ。俺たちはコピーロイドたちが駆け付ける前に校長室に向かうために走りだした。