「ようこそ、セントラルパビリオン...いや、WWW総本部へ!!」
ワイリーの放った一言に騒然とした。
ここがWWWの本拠地だとしたら、ここに招待したのは彼だということになる。
私たちは騙されたのだ。メールがきたとき、ジェミニマンやライカの言うとおり怪しいと捉えて浮かれていなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。
「それだけではないぞい。この万博自体、ワシが作ったのだからな!」
ケイン市長がワイリーと組んでいたことは炎山くんから聞いていた。ワイリーが彼と組んでいた本当の理由はここにあった。万博を隠れ蓑にするため、そして資金提供。
「おかげでワシの計画は最終段階に進んだわい...計画を完成させるにはあと二つ、あと二つの要素が必要なんじゃ...」
ワイリーがこちらに目を向けた。
わかっている。彼が何を求めているのか、今なら分かる。それがいままで散々私たちのことを狙っていた本当の理由だから。
「まず一つはジェミニマンの中に眠る電脳獣。...そしてもう一つは、」
「...もう一つ」
「...アイリス!!ワシのもとに帰ってくるのじゃ!」
アイリスちゃんの肩がびくりと上下した。
どうしてアイリスちゃんを必要としているんだ。私たちはわからず、ワイリーの言葉を鵜呑みにしてアイリスちゃんを見た。
「お前が帰るところはここしかないのじゃ。さあ、戻ってこい!」
「あ、アイリスちゃん...どういうこと、なの...?」
問いかけるが返事はない。
何が起きて、目の前の現実が信じられなくて、言葉を失っているとワイリーが声を上げた。
「でてこい!」
その言葉を合図に飾ってあったコピーロイドたちが一斉に姿を変えた。あれはWWWが使用している量産型ナビだ。
私たちは完全に敵に囲まれ、逃げ場を失ってしまった。予想もしていなかった事態にみんな慌てている。どうしたらこの事態を切り抜けられるか必死に考えたが数が多すぎる。そうしているうちにもコピーロイドたちは私たちを囲む輪を狭めていく。
「とらえろ!!」
『オウ!!』
ワイリーが命令するとコピーロイドたちが一斉にこちらに襲ってくる。
生身の人間がナビに勝てるわけがない、と心のどこかで思いながら私は必死になって攻撃を避け、逃げ回った。
私がそうしているうちにもみんなどんどんコピーロイドに捕まって行ってしまう。
攻撃をかわし、手をのばしてくれるライカのその手をとった。一気に引かれ、一難を逃れたがまた敵に囲まれてしまう。
残ったのは私にライカ、それに熱斗くんの三人だけだった。
「往生際の悪さは天下一品じゃのう。しかし、さすがにその数はお前たちでも無理じゃろう!」
なにか抵抗する手段があれば、彼等と同じようにコピーロイドがあれば、対抗できたかもしれないのに。
ワイリーの命令がコピーロイド立ちに下った。もうだめだ、そう思うと怖くなって目を瞑ってしまう。
だがいつまでたっても痛みはこない。変わりに聞こえたのはナビたちの断末魔。
恐る恐る目を開けてみると、そこには見覚えのある赤いナビ、あれは間違いなくブルースだ。そして私たちを囲んでいたコピーロイドはみんな地に伏していた。
「遅くなったな」
「...炎山!!」
久しぶりの再会に熱斗くんが声を上げたが今はそれどころではない。
新たなコピーロイドたちが迫ってくる足音が聞こえる。ワイリーを目の前にしているのだ、彼はなんとしてでも私たちを捕まえようとしてくるに違いない。
「ここは一旦退却だ!状態をたて直して出直すぞ!」
コピーロイドからブルースを戻すと、私たちは頷いた。そして一斉に走り出す。コピーロイドが本格的に襲ってくる前になんとしてでもここから逃げ出さなくてはならない。