なまえが先生と呼ぶ男は颯爽と現れ向かってくる六法と入道を返り討ちにした。彼もWWWの一員だということは知っていたがここまで強いとは思わなかった。
彼の良心によって怪我のないチロルは言われた通り少女を離し、倒れた六法と入道を引きずってこの場から逃げ出した。覚えてなさい!なんてお決まりの台詞を残して。

気を失った少女は目立った怪我もなくとりあえず一安心といったところだ。
問題はこの男の方だった。


「せ、先生...」

「先生...か。そう呼んでくれるのは嬉しいんだが、私にはそう呼ばれる資格はない」


自傷するような笑みをする。
WWWの団員でありながらなまえたち生徒を騙し続けた男。だがその心が完全に悪に染まっていたならば、今こうして俺たちを助けになんか来ない。この男は善人なのだ。


「先生もバレルさんも似てるから、私わかる。なにか理由があるんでしょ...?」


なまえは純粋だ。彼もそれを知っている。だから逃げるように俺たちから背を向けた。その目を見ていると自分が酷く見えるから。




娘は生まれつき重い病気を患っていた。治すには大きな手術をしなくてはいけなかった。しかし、その手術を受けるには莫大な費用がかかる。娘の病状は日々悪化する、一向も早く手術をうけなくてはならなかった。そんなとき、費用を出すという人物が現れた。それがワイリー。こうして娘に手術を受けさせる変わりにWWWに身を置くことになった。
教師として才葉学園で働く方、ケイン所謂市長の行動を監視報告を行った。ワイリーと協力関係にあったケインを見張るには学園で働いているものが適任だった。あの日ブラストマンを使って起こした事件も、騒ぎに乗じてケインのパソコンをハッキングしようとしていた。だがその日編入してきた子がブラストマンを倒して失敗してしまった。
今思えばよかったのかもしれない。その子がブラストマンを倒していなければ大事な生徒たちの命が失われていたかもしれないのだから。


「どんな理由があったとしても私の犯した罪が消えることはない」

「先生、まだ間に合うよ。...先生はどうしたいの?」

「...君たちの力になりたい。だが私では力になることはできそうにない...。WWWは犯罪集団だが、私にとっては娘の恩人でもあるんだ。...それにバレルもいるしな...」

「...バレルさん?」


大学生の頃、空手の修行のためアメロッパに渡っていた時、強い相手を求めてアメロッパ軍のキャンプを訪れた。そこで一人の軍人と戦った。強さには自信があった、しかし勝てなかった。それどころかコテンパンにやられた。そうその相手がバレル。
戦いの後バレルに頼み込み一年間のあいだ、バレルのもとで修業をした。バレルは戦い方だけでなく、戦うことよりも大事な"自分の信念"を持って生きていくということを教えてくれた。年は近いが、バレルは心の師匠だ。
バレルだって口にはしないが理由があってWWWに入ったのだろう。だからバレルを信じているし、裏切るまねはできない。


「...本当はみんなが学校を卒業するまで一緒にいたいが...、いや何も言うまい」

「先生っ!」

「君に事情があってあの学校にきたことは知っている。それでも可愛い教え子には違いない。元気でな...」




バレルを連れて行ってしまった。俺たちがもっと大人なら何か出来ただろうか。だが今の俺たちは彼等を見送ることしかできなかった。軍人でもある俺たちは、まだ子どものままだと思い知らされた。

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