その少女は確かにそこに立っていた。
さっきまでそこにいなかったのに、どうして。


「アイリスちゃん...!」


なまえが少女の名前を呼ぶ。彼女があの元WWW団員たちが探しているアイリスなのか。


「私はここよ、みんなを解放して」

「あら、自分から出てきてくれるなんて、ラッキーだわ」


チロルの笑みが深くなる。それと同時にお仕置きロボットが一人の少女を囲む。だが少女は臆することなく立ち続ける。


「低抗しちゃだめよ?なるべく怪我はさせたくないから。」

「低抗はしないわ。だから、このロボットをどこかにやってちょうだい」

「もし、いやだと言ったら」

「...ロボットたち、下がりなさい」


少女が言うとロボットたちが彼女から離れ一列に整列した。一体何が起きているんだ。
ロボットを動かしているチロルを見ても彼女も慌てている。再度指示を出してもロボットたちは動こうとしない。一体あの少女が何をしたというんだ。

少女がこちらに歩いてくる。
途端俺たちを囲んでいたお仕置きロボットたちの電気ショックがやんだ。


「...なまえちゃん、ごめんね」


少女がお仕置きロボットたちの向こう、俺たちの前を通り過ぎていく。その時ロボットたちが道を開けた。彼女はチロルたちのところへ向かって歩いている。これも彼女がしたことなのか、俺にはわからないが、この状況から逃げ出すチャンスだ。


「今は逃げるんだなまえ」

「だめっ、アイリスちゃんが...!」

「冷静になれ。この状況は不利だ、だから一度大勢を立て直す。」

「で、でも」

「なまえ、勇敢と無謀は違う」


なまえはまだ納得していないようだが顔を俯けた。それに今こうやってロボットたちを動かしているような少女が奴らにすぐやられるとは考えにくい。
あの少女はそれをわかった上で行動を起こしたに違いない。そして俺たちを、なまえを信じているから俺たちを逃がしてくれるのだ。

なまえの手を引いて走りだす。後の二人も俺たちの後を追うように走りだした。
少女の様子を窺うように振り返ると、穏やかに笑いながら俺たちを見送っていた。

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