『...っ、さすがは電脳獣の力といったところか...』
『...。』
『...なんだその顔は、お前は俺に勝ったんだぞ。』
『別にお前に勝ちたかったわけじゃない。』
傷ついたカーネル、彼の言うとおりジェミニマンの表情は晴れない。
私たちは彼を止めたかっただけで倒そうなんて思ってなかった。でも倒す気でいかなきゃ、私たちが倒されていた。
どうして、どうしてこうなってしまったんだろう、ねえ、
「...ねえ、バレルさん。聞いてるんでしょ...?」
本当に、こうするしかなかったのかな
「我々はどうあっても戦う運命にあった。そしてお前が勝った、それだけだ。」
顔は見えない、でも確かに声は聞こえる。こうやって私の問いに答えてくれるバレルさんは優しい人なんだ。
「...違う」
「何が違うんだ」
「私が聞きたいのはそんな"運命"なんて言葉じゃない!...バレルさんは、バレルさん自身はどうしたいのかってこと!」
バレルさんは本当に自分からWWWに入って、本当に自分から私たちと戦っているのか。
私には、"運命"というその言葉がとても苦しんでるように聞こえた。
「まさか小学生に諭されようとはな」
「なっ、小学生ではないですっ!」
「...そんなこと、久しく忘れていたな」
バレルさんが少し呆れたように笑ったような気がした。それが私に対してなのか、自分に対してなのかまではわからない。
「そうだな、俺は誰かにそれを聞いてほしかったのかもな」
「聞きます、だからちゃんと話してください」
「...俺はここで降りるわけにはいかないんだ」
だが返ってきたのは予想と反するものだった。彼はまだ無理をする気なのだ。
何がバレルさんをそうさせているのか、それを話してくれなきゃ私たちにはどうすることもできないじゃないか。
「止まるわけにはいかないんだ。」
ジェミニマンの前に膝をつくカーネルがプラグアウトした。
これでバレルさんとの通信も切れてしまうと思った時、小さく聞こえた。すまない、ってバレルさんは確かに言った。