警備ロボットの退いた校長室の扉を開けた。
「...え?」
私は確かに校長先生、ケイン市長に会いに来たはずだ。なのになぜ、なぜここにクロヒゲがいる。
「ほら、見たことか。こうなることが一番面倒なんだ」
「なんでコイツがここにいやがんだよ」
「...見られてしまったものは仕方がない...」
嫌な予感がした。すぐにここから出なければ、と入ってきた扉を押したが、びくともしない。完全にロックされてしまった。
ケイン市長とクロヒゲはゆっくりとこちらに近づいてくる。私は扉を背に二人の動きを見ることしかできない。
「市長さんとクロヒゲたちは...」
「...そう、君が今想像していることは概ね正解だろうね。私と彼等は"協力関係"にある」
やはりそうだったのか。ということは彼は今の今までこの街の、才葉シティの住民すべてを騙してたということになる。人は見かけによらないとは、このことなのだろう。
「なんで、そんなことするの...」
「大きな権力を欲するのに理由なんて必要あるかね」
なんて無茶苦茶な、この人は純粋な悪だ。上へ行くためにどんな卑劣な手だって使うような。
「今は電脳獣、つまり君のナビをどんな汚い方法を使ってでも手に入れようと思ってる」
「なんで、そんなに電脳獣が欲しいの...?」
似ている、自分のためにジェミニマンを取り合っていたあの時の軍人たちのような。
こんな人たちに、ジェミニマンを渡してはいけない、渡したくない。
「そうだね、冥土の土産に君には聞かせてあげよう。ちょっとした昔話をね...」
そう、これは、電脳獣と恐れられた彼等が生まれたわけ、そして彼が電脳獣を重める昔話、