「...ごめんなさい。私が最後まできちんと制御できていれば彼は...」
「謝らないでアイリスちゃん...。...それより、あなたは一体...」
アイリスちゃんは答えてはくれない。
それよりも周りが少し騒がしくなってくる。近頃続く事件に不安を覚える住民、こんな治安状態じゃ万博どころではないのでは、そんな声が聞こえる。
万博がなくなっちゃう、それを一番楽しみにしていたのは彼だ、そのために私たち頑張ったのに、そんなのって、
「ご安心ください!」
声のする方をみると階段から市長さんが降りてきた。フードの男も一緒だ。
「みなさん、不安になることはありません。安全な街づくりは私の選挙公約の一つでもあります。あのバケモノは必ず退治してみせましょう!」
「ば、ばけもの...?」
聞き捨てならない。彼は少し特殊なナビだ、でもバケモノ呼ばわりされるいわれはない。
「まってください、バケモノって、なんですか?!」
「おや、君はオペレーターナビの...。...そういえばさっきのバケモノは君のナビのジェミニマンくんだったのか」
だから、彼は彼であって、バケモノではない。
「ははーん、これで納得できたよ。オペレーターナビになれたのもあのバケモノじみたチカラのお陰、というわけだ。」
「ジェミニマンはバケモノなんかじゃない!!」
「...あれがバケモノでなかったらなんだというのだね。少なくとも私にはバケモノにしかみえなかったが...」
市長さんが私を見る目、その目を知ってる。その目は私を軽蔑する目だ。両親の功績と私の出来を照らし合わせて勝手に絶望する目だ。
やっぱり私はトラブルメーカーだ。目の前のフードの男が言ったように大人しく家にいればよかったんだ。例えそうすることで友人を失ったとしても、どんな言われをされようとも、私が一人で我慢すれば済んだ話だったんだ。今思ってももう遅い。
こんなところで泣いたらみっともないって、また叱られる。私はそこで俯いて隠すことしかできない。