シーサイドエリアに降り立つとすぐに彼の背中を見つけた。だが足元には苦しみながら倒れる住民の人たち。これも、彼がやったというのだろうか。
獣の唸り声が聞こえる。姿かたちはいつもの彼だけれど、完全に自我を失っている。今の彼は電脳獣其の物。
こわい、震えが止まらない、でも止めなければ


「ジェミニマン!もうやめて!」


私の声に気付いた彼がゆっくりと振り返る。
その目はいつもの彼じゃなかった。私よりも大きい彼が私のことを冷たく見下ろしている。


「ねえ私だよ、なまえよ!お願いだからこんなこともうやめて、一緒に帰ろうっ、ジェミニマン!」


唸り声を発したままこちらにゆっくり近づいてくる。私のことが、わからないのだろうか。
彼の手は強く握りしめられている。ぞっとした、私は今からそれで攻撃されるのだ。いつだったかサーチマンを思い切り殴り飛ばしたあれを、私も受けるのだ。あの時と全く一緒、拳を引いた、怖くて見てられなくなって強く目をつぶった。

だがいつまでたっても痛みはこない。
恐る恐る目を開けると、拳は寸でのところまで迫っていて目を見開いたが、確かに止まっている。


「...ジェミニマン?」

「まだよ...安心しないで...」


聞き覚えのある女の子の声。こちらにやってきたのは、アイリスちゃんだ。どういうことだ、それよりこんなところにいたら彼女が危ない。


「...だめ、さすがに完璧にはコントロールしきれない」

「アイリスちゃん、なにを...」

「なまえちゃんは、彼に声をかけ続けて...!彼は今、電脳獣と必死に戦っている。助けられるのはなまえちゃんだけ!」


彼の拳がゆっくりと私から離れていく。よくわからないがこれもアイリスちゃんがやっているのか。とにかく今は彼の目を覚まさなくては、私はありったけの声をだして彼の名前を呼び続けた。


「ジェミニマン、負けないで!電脳獣を抑えること、ジェミニマンならできるでしょっ?」

『...っ、...なまえ...』

「あと少し、あと少しだから、頑張って!」


その瞬間獣の遠吠えが辺りに響き渡る。あまりの音量に耳を塞いで目も閉じてしまった。辺りが静まり返ったことに違和感を覚え目を開くと、そこにはもう彼はなく、コピーロイドだけだった。


「ジェミニマン...?」

「...多分、あまりの苦痛に耐えられなくなて、どこかの電脳世界に逃げたんだと思うわ...」

「...そ、そんな...」


まだ彼は苦しんでいる。そんなかれをこのままにしてはいけない。でもナビもなくどうやって電脳世界のどこかにいるジェミニマンを助ければいいのだ。

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