いつまでたっても痛みはこない。
怖くて強く閉じた目を開けるとそこには、アイリスちゃんが私を守るように立っていた。カーネルは振りかぶったブレードを振り降ろそうとはしない。
『な、なぜ...おまえが...ここに...?』
アイリスちゃんは無言のまま。
するとカーネルは一瞬苦虫を噛んだような難しい顔をして、私たちに背を向けた。
『命拾いしたな』
そしてそこにはカーネルだったコピーロイドだけが残された。
アイリスちゃんが、また私を助けてくれた。これじゃどっちがどっちを助けにきたのかわからない。
だが再会に喜ぶ間もなくスカイタウン全体が揺れ始める。さっきの入道がフォースプログラムを持ち去り、更にはメインシステムであるウェザーくんをカーネルが破壊してしまったのだ。それはつまり、スカイタウンの落下を意味していた。
足に力を入れて立ち上がる。まずはアイリスちゃんの安全を確保して、それからどうにかして落下を止めなくては。
「...。」
「...あ、アイリスちゃん...?」
だが彼女は私の意図反してウェザーくんのコントロールパネルを操作し始める。呆気にとられていると、何かの通知音が聞こえた。
『スカイタウン、ヨビ デンゲンシステム キドウシマス』
予備電源システムを起動したスカイタウンの揺れは収まった。
でも何故それをアイリスちゃんが知っているのか、それに彼女はどうやって起動させたのか。今までのこと全部聞こうとアイリスちゃんに手を伸ばしたその時、遠くの方で、エレベーターの起動音が聞こえた。よかったこれで帰れる、とアイリスちゃんの方を向き直ると、彼女はもうそこにはいなかった。
余談だがこの騒動の数日後、囚人二名が脱走することになる。私たちに関わった"組織"の人間だ。