ホームステイ先はニホン人のおじさんの家だった。おじさんと言うには少し若い風貌で優しい人です。話を聞くと私の事情を知っているそうです。そりゃ事情を知らない人だったら変な事件に巻き込みかねない。でもそれを知ったうえで私と一緒に生活してくれる彼は本当に優しい人なのだろう。
その日はジェミニマンとインターネットを探索して明日から始まる学校に備えて早めに眠りについた。
次の日私はおじさんがいるであろうリビングに向かった。そしたらおじさんが目を見開いてこちらに近づいてきた。「君はその格好で学校に行くつもりなのかい」と慌てた様子のおじさん。何のことかと首をかしげていたらジェミニマン少し呆れたように「ニホンでは軍服で学校にはいかないそうだ。」と教えてくれた。
軽いキャリーケースから引っ張り出した服に着替えたらおじさんは笑って頭をなでてくれました。
今日から通うことになる才葉学園の入り口をくぐり、職員室はどこだろうと辺りを見回していたら大音量の警報が鳴り響いた。びっくりしてその場で固まっていたら学校のセキュリティであろうロボットたちが私たちを囲んでしまった。
『シンニュウシャ ハッケン!シンニュウシャ ハッケン!』
ロボットたちはその言葉を繰り返していた。私がここで囲まれていることとその言葉の表す意味はすぐにわかった。このロボットたちは私を不審者かなにかと間違えているのだ。それがわかった瞬間すぐに反論した。
「ちょ、ちょっとまって...私ここの生徒なんだけど...!」
『ソウナンデスカ...ソレヲ ハヤク イッテクダサイ』
さすが高性能ロボット話がわかってる。これで一安心を息をついた瞬間、ロボットは更にとんでもない要求をしてきたのだ。
『デハ セイトテチョウ ヲ ミセテクダサイ』
...せいとてちょう?生徒手帳?ここの学校にはそんなものがあるのか。そもそも今日からこの学校の生徒の私がそんなもの持っているはずがない。おじさんから何か預かってないのか、とPETを見るが中にいる彼は両手を上げてお手上げ状態。
いつまでたっても生徒手帳を出さない私にしびれを切らせたロボットが、
『ヤハリ シンニュウシャ カ!ヒットラエロー!!』
ロボットたちを統率しているであろう一体がそう声をあげると私を囲んだロボットたちがゆっくりとこちらに迫ってくる。これは怖い。いつか行かされた母国の任務より怖いかもしれない。
迫りくる恐怖に怯えていた私は彼の声で我に返った。
『なまえっ、あいつにプラグインしろ!俺が先に進ませてやる!』
それしかないとPETを構えてジェミニマンを送りだそうとした。その時だった。
『ちょっとまった!!ぜんたーーい!うしろにーーーさがれ!』
先程までカタコトだったロボットが急に流暢に喋り出した!寧ろ本当に人が喋っているかのような...!
『違う!いま手が離せないから警備ロボのスピーカーを使って職員室から話している』
ああそうなのか、新しい怪現象なのかと思っておじさんの家に帰ったら話そうと思ったのに...。
ともかくこれで私がロボットたちにひっとられることはなくなった。スピーカーの向こうから話している人、今日から私の担任の先生になる人がセキュリティを解除してくれた。本当によかった、これで初登校初日からジェミニマンがロボットを一掃するなんて問題を起こすことはなくなった。私が安心しているのとは対極、ジェミニマンは目立てなかったじゃないかと不満げな声をあげていた。
スピーカーの声に従って職員室に向かう途中、物珍しさから上に見上げた。
「...ジェミニマン」
『どうした』
「あれ、なんだろうね」
私が指さす先には意味ありげに飾られた人形。顔が掘られているわけでもなく、塗装も素気ない、無機質なロボットのような人形が学校の入り口に飾られている。
『さあな。あとで聞いてみればいいじゃないか』
興味なさげに彼は答えた。
彼の言う通りあとで先生にでも聞いてみよう、と職員室へ案内してくれるロボットへと視線を戻した。