俺が目を覚ました次の日の放課後、いつも通り帰ろうとするなまえはどこか浮かない顔をしている。昨日からずっとこの調子。
話を聞くと電脳獣の暴走を止めたのは謎のナビ。そいつにいろいろ言われてなまえが気にしてるわけだ。
『なまえ、気にするなって言ってるだろ?俺は平気だから』
「で、でも」
『ほら、門の前でコジロー待ってるんだろ。こんなゆっくり行ったらまたとやかく言われるぞ』
「...うん」
納得のいかない顔をしているが、少しだけ笑ってくれた。そして外で待つコジローのもとまで走った。
外に出ると空は厚い雲に覆われていた。ついさっきまでカンカン照りだったのに。今日は雨の予告は出てないはずだが、どうしたのだろうか。なんて思ってたら雲が退いて太陽が顔を見せた。
「コジローくん、なんか寒くない...?」
「そういや...」
太陽が出たはずなのになまえとコジローが寒がっている。そうしているうちにまた太陽が雲で隠れてしまう。そしてなにかちらちらと白いものが降ってきた。本国で嫌ってほど見てきたあれが降り出したのだ。
「ゆ、ゆき?」
「スカイタウンで何かあったのか?この調子じゃ何が降ってくるかわからないぜ」
雪が降ってきて大して驚かないなまえとは対照的にコジローはどこか嬉しそうだ。ニホンじゃ雪は珍しいのだろう。スカイタウンで天気をコントロールされているのなら尚更。
でもこのままじゃなまえもコジローも風邪をひきかねない。まあ、馬鹿は風邪をひかないと聞いたことがあるが。
門の前でコジローと別れたなまえは家まで走って帰った。途中で風が強くなって才葉シティは吹雪にみまわれる。
薄着のなまえは急いで玄関を開けて中に入った。暖房がついてて温かかいということはおじさんは中にいるということだ。リビングまでいくとおじさんはテレビでニュースをみていた。
『こちらはスカイタウン管理局です。只今、才葉シティ中の天候が不安定になっていますが、現在原因を調査中ですので、みなさん家から出ないようにしてください!』
ニュースでは中継先のスカイタウンを映していた。強風でカメラも一緒に揺れる。
そのぶれたカメラが、一瞬アイリスを映したときは、唖然とした。
「...いま、アイリスちゃん、いなかった...?」
『...ああ、いたな』
「なんでいたのかな...」
『...じゃあ行って確かめればいいじゃないか』
俺がそう言ったらなまえが驚いたように俺を見た。俺は何か間違ったことを言っただろうか。
『昨日何言われたか知らないけど、見ず知らずのナビに言われたことと、アイリスのこと、どっちが大事かわかってるだろ?』
なまえは少し間を置いて、吹っ切れたように笑った。答えは決まってる。
「...いこう、アイリスちゃんのところに!」
そう言って急いで部屋から持ってきたのはこれまた嫌ってほど見てきた緑色のコートを持ってきたのだ。
そうだな、それで寒さも大丈夫だな。もう突っ込むのはやめた。