誰だこの電脳に"後戻り禁止法"なんて面倒極まりないシステムを組み込んだのは。何度後に戻ろうとしたところをなまえに必死に止められたことか。

まあそんなことがあったが、ようやっとここまできた。

そんな俺の苦労を知らない顔でそこに立っていたのは、ブレードを手にした黒いナビ。以前世話になったそのナビは、


『やっぱりおまえだったんだな』

「え、な、なんで...うそでしょ...?」


カーネル。六法の言っていたお客さんとは、彼のことだったのだ。


『久しぶりだな、ジェミニマン。それになまえ...』


ここに来るまで、何回も回線に割り込んできて無駄な抵抗だとか安っぽい正義感だとかデリートされにくるのかとか、好き勝手言ってたのもカーネルだ。
奴はサーチマンと一緒で冗談を言うような奴じゃないというのは知ってる。だから今回も本気なんだとは理解できたが、そうあってほしくなかったと思うのは以前共闘してその強さを知っているからか。
だから俺は無駄とも思える質問を投げかける。


『...一応聞くが、どういうわけでここに?』

『お前のことだ、わかっているんだろ?ここに私がいるということはこの作戦は私の指揮のもとで行われているということに他ならない。』

『その物言いだと、おじさんの濡れ衣もお前の指示だ、ってことになるが』

『そう言ったつもりだが』


PETの向こうのなまえが息をのんだ。なまえには彼がこんなことをするようには思えないのだ。俺も同じだ。
口には出さないがカーネルはそれを察したのか先に口を開いた。


『お前の安っぽい正義よりも遥かに重く大事な理由を背負っている。その理由のために俺は今こちら側に立っている。その結果が例えお前と対立することになっても一向に構わない。悪いことは言わん、ここから去るのだ、ジェミニマン!』

『そんなこと言えば俺が素直に還るとでも思ってるのか?確かに俺の正義は安っぽいかもしれないけど、それより重い理由があったとしても、やっていいこと悪いことぐらいお前にもわかるだろ!!』

『...そうか、やはり抵抗するか。お前の性格を考えればそれもまた当然だろう』


同じ軍事ナビで行動原理も同じはずなのに俺たちはわかりあえない、必然なのかもしれない。同じ軍事ナビだからこそ、行動原理が一緒だからこそ、目的のために目の前の"敵"は倒す。

俺たちは同時に構える、先に動いたのはカーネルだった。ブレードが振りかぶられたその時、"なにか"がカーネルに命中した。それを受けたカーネルはシステムの一部が麻痺したのか動かない否動けないでいる。


『...なんだ、今の衝撃は...?』


今の攻撃は誰の目にも捕らえられなかった。何が起きたのか追いつけてない俺だが、カーネルも同じ。
まただ、また何かが近づいてくる、見えない"何か"がカーネルに命中する。


「な、なにがおきてるの...?」

『...誰かがカーネルを攻撃してる...見えないが、確かに誰かが攻撃してる...。』


この電脳には、また別のナビがいるようだ。それが敵なのか味方なのかわからないが、カーネルの動きを止めてくれたということは、期待してもいいのだろうか。

遠くの方でものすごい爆発音が聞こえた。この電脳に爆発する要素はどこにもない、だとしたら今カーネルを攻撃した"何か"が起こしたものなのだろうか。もしかして、カーネルをおびき寄せようとしているのか。


『...いいだろう、何者かは知らんが受けてやる』


カーネルもそれがわざと起こされた音だと気付いてる。あえてそちらに向かおうとするのは、もう一体俺の相手ができるナビがいるからだ。忘れてはいないだろうか、そう、検事六法のナビであるジャッジマンのことを。


『ジャッジマン!!』


カーネルがそいつの名を呼ぶとどこからともなく転送されてきた、背の高い青いナビ。カーネルは俺のことをそいつに任せると音のした方へいってしまった。


「今、すごい音したけど、なんだったの...?」

『気になるけど、今はこいつを倒すことに集中するんだ』

『そう、お前たちの相手は私で十分だ!』


俺は構え直す。
正直カーネルを相手にするのは俺だって苦労しただろう。それを誰だか知らない奴が請け負ってくれたんだ。心おきなくこいつの相手ができる。
こいつは六法のナビ、こいつを止めることが俺らの目的、だから迷いはない、全力でいかせてもらおう。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -