グリーンタウンの裁判所、職員の人に無理を言って中に入れてもらった。見つけたアリバイを直接審判の木に見せておじさんを助けないといけない。

そびえ立つ圧倒的存在の審判の木、裁判の時には感じなかった解放感、その中央に、彼は立っていた。
映像にはっきりと映っていた六法さん。昨日の昼、私もおじさんもいない時間におじさんのパソコンを触り、履歴を消し、散らばる書類をPETの上に重ね、何事もなかったように去る音。


「...け、検事さん」


出す声が震えてしまう。突き付けられた事実が信じられない。でも映像には確かに六法さんが。
私が慌てていた様子をどこかで聞いたのか、彼もすごく焦っている、ように見えた。


「まずいよ!もうすぐ彼の刑が始まっちゃうよ!アリバイは、見つかった?」

「...証拠、ありました...。部分的に消された不自然な履歴と、真犯人の映像も一緒に」


一瞬六法さんの顔がこわばった。しかしすぐにあの優しい表情に戻る。まるで開き直ったような。


「...そうか、ばれちゃったか」

「なんでおじさんになんなことしたんですかっ」

「ある人からの依頼があってね...。...あの男を使って君をこの国から追い出そうとしたんだ。君のナビがこの国にいる限り、ものすごい脅威になるんだ。僕らの"組織"にとってね!」


確かにおじさんに何かあれば私は本国に帰らざるをえないだろう。そうすることで、ニホンにジェミニマンがいなくなることで、活動がしやすくなる"組織"。その"組織"に所属する六法さんが本当の姿。未だに信じられない、だって裁判の時に、すごくかっこよかったのに。


「おしゃべりはここまで。...審判の木、やるんだ!こうなれば正体を隠す必要はない!才葉シティの住民すべてを有罪にしろ、そして僕の邪魔をするこの子を重罪にするんだ!!」


な、いま、彼はなんて言った。おじさんの刑の執行だけでなく、住民をすべて有罪、私は重罪。私たちが何をしたって言うんだ。
ガン!ガン!審判の木が判決を下す。


『ゼンイン・ユウザイ!!』


審判の木の指令がすべてのお仕置きロボットたちにわたってしまった。奥の扉からはこちらに向かってくるお仕置きロボットが見える。手はバチバチと電気ショックを構えて。しかも凄まじい数だ。この裁判所すべてのお仕置きロボットがこちらに向かってくる。


『なまえ!!とにかく逃げろ!!』


PETの声に我に返った。あの電気ショックの対抗手段がない今、逃げるしかない。振り返り扉を目指して走り出した。
部屋を抜け出し、扉を思い切り閉めた。もしこの扉を破ってお仕置きロボットが来たらどうしよう、と恐怖から一歩一歩後ろに下がる。が、一向にその気配がない。


『立てこもるつもりだな。審判の木がある限りあいつはやりたい放題できる、その審判の木に自分以外は近付けなくする気だ。』


さすがによく考えられている。これではおじさんの刑を止めることも審判の木の暴走もとめることが出来ない。


『なまえ、あれだ!』


PETから聞こえる声に顔をあげて前をみると、そこには職員用なのだろうか、少し小さめの扉。最初きた時はあそこには警備員の人が立っていたが、非常事態の今はその人も見当たらない。
あの扉の向こうにいけば審判の木を止めるヒントがあるかもしれない。確証のないそれを信じて私はその扉を開けて裁判所の裏手に出た。

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