未だ苦しむジェミニマンに癒しの水を使った。これで、これでようやく彼は前のような彼に戻るのだ。そのはずなのに、彼の苦しむ声は止まない、むしろ強くなる一方だ。


「な、なんで...」

『もしかしたら電脳獣が水に触れて拒絶反応を示しているのでは』

「でも電脳獣はジェミニマンのブラックボックスのなかにいるんだから触れるわけ、」

『ブラックボックスもジェミニマンを構成する部品、ということです』

「じゃあ、どうすればいいの...?」

『俺たちは出来る限りの手を尽くしました。あとは彼自身がどうにかするしか...』


今の今まで苦しみに声を上げていたジェミニマンがゆっくりと起き上がったのだ。ようやく回復したのか、と息をはこうとした瞬間ジェミニマンが自分の拳を思い切り引いた。一体何があったのかわからないまま、その拳はサーチマンに向かって突き出される。予想していなかった事態に防ぐ術もなく顔面に拳を受けたサーチマンは壁まで突き飛ばされた。一方殴った方はゆっくりサーチマンに近づく。だめだこれでは誰も助からない。


「ジェミニマンっ!!」


私は咄嗟に彼の名を叫んだ。すると彼の歩みがピタリと止まる。私の声が、彼に届いているのだ。取り込んだ電脳獣の力に呑まれそうになりながらも、彼は抗っている。でも名前を呼ぶだけじゃだめだ。なにか、なにか決定打がなければ。

ガラガラと壊れたプログラムが崩れる。宙に舞う破片をかき分け何かが飛び出した。


『いいかげん目を、覚ませっ!!』


緑色の拳がジェミニマンに直撃。衝撃で壁まで吹っ飛ばされてしまった。
サーチマンが大声を出して拳を使ってジェミニマンを殴って吹っ飛ばした。衝撃的な光景ばかりで目を丸くしていたが、それどころではない。先程と同じようにガラガラとプログラムを崩しながら立ち上がるジェミニマン。今度はしっかりとライフルを構え迎え撃つ準備をするサーチマン。一触即発の空気を先に破ったのは、ジェミニマンだった。


『...っ、...てめえ、おぼえてろ、よ...』


ばたんと倒れてしまった。今度は何が起きるんだ、と身構えていてもなにも起きやしない。心なしか倒れた彼からは小さな寝息が聞こえてくる。


『どうやら気を失ったみたいですね』


ライフルをしまい私に向き直ってサーチマンは冷静に言った。...ということは、


『はい。もう大丈夫かと思います。』


先程はききれなかった息を全てはききった。ようやく、ジェミニマンをたすけることが、でき、た、
遠くで、私を呼ぶサーチマンの声が、聞こえるような気が、した

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