旧式のPETも持ち見覚えのある後ろ姿を追いかけている。少し早いその速度に小走りになっていた。嫌でも耳に入ってくる罵声の数々を振り払おうと前の背中だけを追い続けた。
これは彼と出会ったばかりの頃みたいだ。今では速度も歩幅も会わせてくれる彼だが、出会った頃は私の存在に疑問を感じる他の軍の人と変わらない反応をしていた。私はそれでも構わなかった。帰ってもパパとママはいない。学校だって楽しくない。ここも変わらない。
顔を上げるのが嫌になった、上げたって難しい顔して私のことみるんだもの。言葉を発することが嫌になった、何を言ったってめんどくさそうな返事を返すんだもの。泣くのも嫌になった、俯いて泣くから誰も気づいてくれないんだもの。

きっとみんな、私がいなくたっていいんだ。自惚れじゃない、確信。だって、みんなが必要としてるのは、強い力を秘めた、ナビの方なんでしょ。
前を行く背中を追うのをやめた。俯けた顔は止まった足先を見つめている。ほら、私が止まったことにも気付かない。ここで声を上げるのは、我儘だ。

でも、一人はいやだ。寂しいのはいやだ。
ちかちかと点滅するPETに呼び掛ける。答えてほしい。


『...なまえ』


ああ、よかった、彼は、私のことおいていったりしない


『なまえ!!』


ガバッ!!
わけがわからないまま顔を上げた。なんだろう頭がぼーっとしてる。ジェミニマンが私を呼んだ気がしたが何かあったのだろうか。


「随分とうなされていたようだが、もう安心だぞ!」


頭上から声が聞こえてくる。この声を知っている。開ききっていない目のまま上を見れば、そこにはマッハ先生がいた。
...そういえば、今は、授業中だった...。


「なんたって今は国語の授業中だからな!!」


ああ、私はまたやらかしてしまったのだ。
先生は表情には出さないが明らかにお怒りだ。そりゃ編入してきたばかりの生徒が授業中に居眠りだなんて。コジローくんや明日太くんが笑いを堪えていたようだがその事実を私が知るのはもう少し後の話になりそうだ。

そしてこの後居眠りしていた罰として漢字の書き取り三十個一文字百個を命じられました。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -