どうにかこうにかセキュリティを抜けて最奥までやってきた。メインコンピュータは目前。だが足元にはなにかが潜んでいる、カメラがこちらを捕らえているのがわかった。俺は警戒して足を止める。
『...我、前方に敵発見せり。緊急浮上するであーる』
ざばん!と派手な音をたてながら浮上してきたのはまさに潜水艦。潜水艦の姿をしたナビ。あれがダイブマン。
『お前だな、この電脳おかしくしてるのは!早く元に戻せ...!』
『却下であーる。そんなことお前に言われる筋合いはないであーる』
『...だ、そうだ。なまえ、さっそくいくぞ』
レーザー砲を出すがダイブマンは名のごとく即座に水の中に潜った。今度はカメラの目印もない。あいつはこれで俺を混乱させようとしているのだろうか。
だったら俺だってやってやるさ。
この閉鎖空間には俺になまえにあいつら以外いない。それにもう素性はばれてるんだ。いまさら気にしても仕方ない。
『そっちがその気ならこっちだって全力でいくぜ!』
俺のホログラムが現れた。
これを初めて見た人はみんながみんな分身プログラムと勘違いするが、少し違う。このホログラムは俺であって俺じゃない。相手の攻撃は通さないけれどこちらの攻撃は再現される超御都合プログラムなのだ。つまりこのホログラムに攻撃は効かない、だがなまえが送るチップデータは本体の俺と同じように発現させることができる。これが軍事プログラムとして開発された俺の最大の武器"ジェミニ・ホログラム"。
『なまえ、ライカに叱られる時は一緒だからな!』
「それでもいい!今はコジローくんたち助けるのが先だから!」
『よし、あいつには悪いけど速効で決めるぞ』
「プログラムアドバンス、送るよ!」
俺の周りに電気を纏った球体が無数に揺れ始めた。隣のホログラムにも同じように発現する。俺はホログラムにアイコンタクトをとる、ホログラムは何も言わずに頷いた。そして俺たちは同時に走り出す。
潜水艦のカメラを確認すると牽制するようにレーザー砲を撃った。だが俺たちが狙うのはあいつが浮上したとき、その一瞬だ。ホログラムが先行して潜水艦ののカメラに近づいた。カメラは一旦後ろに下がると一気に浮上してきた。未だ今しかない。俺は勢いよく地面をけり上げた。
『くらえっ、ユラパレード!!』
ホログラムと共に電気球体を一斉に放つ。電気を通す水属性のダイブマンには大ダメージだ。
『わ、我、沈没せり...無念であーる』
爆発と共にデリートされたのを確認すると俺はすぐさまメインコンピュータに歩み寄った。早く"エサの時間"を知らせるベルを鳴らしてコジローたちを助けなくてはいけない。
「ジェミニマンっ!」
『...あった、これだ!』
ボタンを押して音量を最大まで上げた。
ジリリリリリ!!
ベルの音が鳴り響く。これで水族館の動物たちは自分の檻に戻ってくれるはずだ。一安心と、外からはなまえのため息が聞こえてきた。俺はホログラムと少し笑いあってハイタッチを交わす。
だがこの事件はこれだけでは終わらなかったのだ。