ふと外の様子を覗いてみた。

少女が一人、キャリーケースに衣類を詰め込んでいた。といっても普段制服ばかりの彼女の私服は少ない。隙間だらけのキャリーケースをしばらく見つめて、考えるように首をかしげた。

何故彼女がいま荷物をまとめているのかと言うと、決していつも共にある彼に愛想尽きたとか私的な理由ではないんだ。

実は彼女、基礎的な学習教育は受けていても義務教育を終了させていなかったりする。つまり生活に支障の出ないレベルの学習は出来ても応用など考える力を要する学習を受けていないののだ。一言で言うと世間知らず。よくこんな子が軍にいられるものだ、とつくづく思う。
まあ彼女が軍に身を置いているのは俺が原因だったりするんだが、これは話すと長くなるから別の機会にするとしよう。
話を戻そう。そんな彼女を今更問題視したのが上層部、俺たちに縁の欠片もないようなところが勉強するついでに世界情勢を学ばせようと、彼等は国内観光もまともにしたことのないこの子を"ホームステイ"に行かせようとしているのだ。

...なんて理由はきっと言い訳だ。本当は俺を国から追い出したいからオペレーターである彼女ごと国から追い出すんだ。憶測だが、きっとそうだ。俺たちは軍の中でも特殊かつ異例な存在なのだ。そのことを彼女が一番理解している。


『なまえ』


俺は窓の外のオペレーターの名前を呼んだ。すると彼女は顔をあげてテーブルの上に置きっぱなしだった"PET"を手に取った。
一切の悩みを取り払おうとした。悩んだって明日の出発がなくなるわけもないし、何より彼女が苦しむ姿を見たくはなかった。だから俺は最善の言葉を選んだ。


『明日からめいいっぱい楽しもうな』


窓の向こう側で彼女は満面の笑みをみせてくれた。

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