インターネットにきた俺は周りに話を聞きながらシーサイドエリアで掲示板をみつけた。ここにたどり着くまでにウイルスに襲われたり不審なナビに襲われたりしたが特に苦戦したという訳ではない。
とにかく俺の見つけた掲示板の書き込みに、こんなのがあった。
『管理人さん、こんにちは。私、シーサイドタウンの水族館で館長を務めているものです。実は、当水族館からペンギンが一羽逃げ出してしまいました。見かけた方は、是非当水族館までご連絡ください!よろしくお願いします!...てのがあってだな。』
「きっとこのペンギンのことだね!」
「わかったなら早く行こうぜ、シーサイドタウン!」
「ところでコジローくんは行ったことあるの?シーサイドタウン」
「ああ何回かいったことあるぜ!行きかたも覚えてるぞ!」
「じゃあさっそく今から行ってみようよ!」
ここ、セントラルシティからシーサイドタウンにはリニアバスでいける。ペンギンを連れているコジローに合わせて歩いているから随分ゆっくりなペースだったがなんとかリニアバス乗り場にたどり着くことが出来た。
リニアバスに乗ってからもペンギンはコジローにべったり。いつも威勢を張っているコジローがペンギンにオロオロしてるのを見ているこちらとしては面白い。
しばらくすればリニアバスは目的地のシーサイドエリアに到着した。
乗り場を出れば目の前に大きな建物。どうやらクジラを模したもののようだ。きっとあれがペンギンのいた水族館なのだろう。水族館に続く道中には出店もたくさんあった。そこで足を止めたなまえ。目を輝かせて何を見てるのかと思ったら、おみやげ屋さんの店頭に並べられたかわいらしいぬいぐるみ。
『...欲しいのか?』
「...。...ほしくないよ」
『...本当に?』
「...。...うん」
俺が声をかけると頭を振ってぬいぐるみのことを忘れようとした。
そのあとなまえは隣に並ぶたい焼き屋さんでペンギンと一緒にたい焼きを食べるコジローのもとに駆け寄りニコニコとその様子を眺めている。ときどき振り返ってぬいぐるみを見ていたようだが、欲しいなら欲しいって素直に言えばいいのに。変なところで頑固だ。
まあそんなことがあったが水族館までたどり着くことが出来た。
クジラの口から建物に入れば、中は水族館特有の薄暗い神秘的な空間が広がっていた。初めて来た水族館になまえは再び目を輝かせた。
そのとき、ピエー!とペンギンが急に走りだした。後を追うとペンギンと一緒に大人がいた。
「ギンジローじゃないか!!心配したぞー!どこいってたんだ!?」
あのペンギンはギンジローというらしい。名前があるということはやはりあのペンギンはここから逃げ出したのだろう。
「よしよし、もうあのコワイ調教師はクビにしたからな!」
何やらあのペンギンが逃げ出したのには深いわけがあるみたいだが、とにかく水族館に返すことが出来てよかった。
よかったと安心しているなまえとは違い、コジローはどこか寂しげにペンギンを眺めていた。
「君たちがみつけてくれたのかい?」
「あ、はい。たまたまペンギンを見つけて、それで彼にすごく懐いちゃったんです。それで、シーサイドエリアの掲示板を見たら書き込みがあったから...」
「そうでしたが!それはありがとうございました!」
ペンギン改めギンジローは警戒心が強いらしく他人に懐くことは珍しいらしい。ギンジローはコジローからもらった"ハトのえさ"が随分と気にいっていたようだ。ギンジローによくした俺たちに彼はお礼と賞して無料で水族館に案内してくれるそうだ。
「ではお帰りの際はひとこえかけてくださいね。ギンジローにも見送りをさせますので!」
そういって彼、館長さんはギンジローと一緒に関係者口へ入っていった。それを見送るコジローの表情は曇ったまま。そんなコジローの手をなまえが引いた。
「...水族館、見て回ろうよ」
「...。...ああ」
それが気遣いなのか素なのかは知らないが、二人は水族館を進みだした。