次の日、寝坊することもなく制服で登校しようとすることもなくおじさんの作ってくれた朝ごはんを食べて学校に向かった。
昨日と変わらない道のりをジェミニマンと他愛のない話をしながら歩く。昨日みたいな緊張はもうない。あの学校の生徒なんだって自覚を少しづつ持ち始めていた。
PETから顔を上げ、前方を確認する。ふと視界に入ったのは女の子、私より小さいコジローくんたちと同じくらいの女の子。もしかしたら同じ才葉学園に通う生徒なのかもしれない。と思いもしたが、なんだか様子がおかしい。
『あ、おいなまえ!』
ジェミニマンの声を無視して急いで女の子に近づく。
女の子はロボット犬に襲われそうになっていたのだ。女の子を威嚇するようにロボット犬は吠え続けている。女の子は恐怖からかそこから動こうとしない。
ああいった類のロボットは人間を襲わないようにプログラムされているはずなのだ。もしかしたらあのロボット犬、ウイルスに犯されているかもしれない。
「ジェミニマン、いくよ!」
『ああ、いつでもいけるぞ!』
「プラグイン!ジェミニマン.EXE、トランスミッション!」
想像通りロボット犬の電脳の中にはウイルスがいた。ジェミニマンが一掃してくれたお陰でロボット犬のプログラムは正常に戻った。PETにジェミニマンが戻ってきたのを確認すると私は女の子に駆け寄った。
「...大丈夫?怪我しなかった?」
少しかがんで女の子の顔を覗き込むように話しかけた。でも女の子はなかなか目を合わせてくれようとはしない。
「...えっと、私なまえっていうの。...この街に着たばかりなんだけど、よければあなたの名前、教えてほしいな」
「...て、れ...、...あり...う...」
俯いたままの女の子は小さな声で何かを伝えようとしてくれたらしいのだが、わからなかった。失礼だとわかっていながらつい聞き返してしまう。そしてら今度は顔を上げて、目を合わせてもう一回言ってくれた。
「た、たすけて...くれて...ありがとう...」
そのまま学校の方へ走って行ってしまった。一体どうしたのだろうか。
「...本当に大丈夫かな...」
『照れくさかっただけだろ?...それよりなまえ、時間は大丈夫か?』
親切に表示された時刻を見て一瞬何が起きているのかわからなかった。いまのウイルスバスティングで随分な時間を消費していたのだ。私は先程の女の子を追うように学校に向けて走り出した。