『待たせたななまえ!...てめえらはこれで頭冷やせ!!』
帰ってきた彼が持っていたのは水の入ったバケツ。それを警備ロボットたちに思い切りぶちまけた。水をかぶった警備ロボットが不穏な煙を上げているがこれは立派な正当防衛になるはずだ。
「お疲れ様ジェミニマン、本当に助かったよ」
『それはよかった...っと、それよりこのコピーロイド、もうすぐバッテリーが切れそうなんだがPETに戻ってもいいか?』
うん、と頷けばコピーロイドはもとの人形に戻っていた。PETを覗けばそこにはいつもと変わらないジェミニマンの姿。やっぱり彼がここにいると安心する。慣れに似た感覚なのだと思う。
『じゃあ改めて、コジローを探しにいこうか』
「でも、どこにいるのかな...」
『警備ロボを操作してたってことは、そういうことだろ?』
どういうことだろう。でも考えてみれば場所は限られてくるのかもしれない。生徒が警備ロボットを操作するなんてことまずない。となれば大人が管理できる場所に管理システムかなにかがあるはずだ。この学園で大人が集まる場所といえば、一か所だ。そう職員室。そうとわかればすぐに行かなければ。教室を飛び出して廊下を走る。
職員室へ入ろうとすると突然警報が鳴り響く。そういえばここにはセキュリティバーがあったことをすっかり忘れていた。今朝はマッハ先生が解除してくれたから入れたのだ。
『もういい飛び越えちまえ!それぐらいなら大丈夫だろ!』
PETから声が聞こえる。確かに腰ぐらいの高さのこのバーなら越えられないことはないが、いいのだろうか。でも解決策を見つける時間も惜しい。ここはジェミニマンの言うとおりにするしかない。支柱に両手を置いて床を思い切り蹴った。
バーを越え警報機を無視して職員室に駆け込んだめばそこは先程の私たちの教室のような高温だった。この部屋でも警備ロボットが暴れているのかと思えば、コジローくんの声が聞こえてきた。やっぱり彼はここにいた。
「お前ら、もういいからやめろって!!先生たちしんじゃうよ!」
コジローくんのもとに行けば、職員室の突き当たりに先生たちを追い詰めるように警備ロボットたちが火を吹いていた。これはまずい本当にまずい。
「コジローくんはやく止めて!」
「わかってるよ!けど、こいつら俺の言うこときかないんだ!!」
「ロボット操ってるってことはコジローくんのナビが操ってるんでしょ?」
「そ、そうだ...。...もうやめだ!ブラストマン!!」
PETに話しかける彼は必死そのもの。でもPETから聞こえてくるナビの声はウイルスバスティングのときに聞いたあのナビのものではなかった。
『お前はこうなることを望んだんじゃないのか?みんなお前の起こした事件に震えあがってるぜ』
「ここまでやるつもりはなかった!ほんのちょっとなまえたちやみんなをびっくりさせたかっただけなんだ...」
『へっ、この臆病者が!それじゃ、お前は勝手に止まればいいだろ!俺は俺で好きにやらせてもらうぜ!!』
ブツッ!!
PETの向こうの彼が無理矢理回線を切った音がした。これでコジローくんは警備ロボットを止められなくなってしまった。火を目前にしている先生たちもこれ以上は危険だ。となればあのナビを止められるのは私たちしかいない。
「コジローくんあのナビ、ブラストマンはどこにいるのっ?」
「い、いくらお前がネットバトルが強くったって無理だ...ブラストマンにかないっこない...」
「強くったってやらなくちゃいけないの!!」
コジローくんが恐る恐る管理システムを指さした。そこからプラグインすればブラストマンに追いつけるようだ。止めようとするコジローくんの声を聞こえないふりして管理システムの前に立つ。
「いくよ、ジェミニマン!」
『ああ!』
「プラグイン!!ジェミニマン.EXE、トランスミッション!」