なまえのことを心配した家族たちが家に帰ってきた。そんな彼らがまず最初に目にするのはアルベルトと一緒にいるなまえの姿。しかも糖分が割り増しされている。そして彼らはみんな、大きなため息をつくのだ。


「なんだよあれ」


いつもは一番に騒ぎ立てるであろうジェットは呆れている。


「まあまあ、いつものことじゃないか。」


ジェットより先に帰ってきたピュンマは苦笑いしながらジェットを宥めるように肩を叩く。


「それにしてもあれは、まあ、見せつけてくれるね...」


テーブルに頬杖をついているグレートはどこか楽しそう。


「いいじゃないか。なまえがそうしたいなら、そうするべきだよ。」


僕が思ったことを口にするとジェットがようやく気持ちを消化したようで、ため息とは少し違う息をはいた。一番衝突が多いジェットだけれど、彼もなまえが好きで仕方ないのだ。口にしたら本人が怒るから言わないけれど。

ふと話題の中心であるなまえとアルベルトを見た。
アルベルトが一方的に話すのをなまえが首を振って答える。たまに手元に用意してある紙になにか書いていて、それを見たアルベルトがそれについてまた話し出す。

あそこまで饒舌なアルベルトをみるのは初めてかもしれない。
どちらかというと面倒には巻き込まれたくない性格をしているから余計なことは言わないし、口を滑らしてもはぐらかすのが上手い。
そんなアルベルトがあることないこと口にするのは、相手がなまえだから。彼女が彼にとってかけがえのない存在だから。上手く言葉にできないけれど、二人が互いにそういう関係を望んで今があるなら、いいんじゃないかなって、僕は思うんだ。
今ああやってアルベルトと一緒にいることでなまえが"生きててよかった"って思えるなら見てる僕としてはとても嬉しい。

ふと、なまえがこちらに気付いてアルベルトから視線を逸らした。
嬉しそうに満面の笑みを浮かべてこちらに手を振ってくれるから、僕も小さく手を振り返す。
その様子を見るアルベルトはまるでお父さんだ。これも本人に言ったら怒られるから口にしない。


でも、僕は時々思うんだ。
本当にそれだけなのかって。


「みんな、晩御飯の準備手伝ってくれる?」


顔をのぞかせたフランソワーズ。今日はみんな家にいるからと彼女は笑顔で言った。張大人も人数が増えて大変だと言っていたが、どこか嬉しそうだった。

その声はなまえとアルベルトにも聞こえたみたいで、なまえはテーブルの上に乗った紙と数冊分厚い本を抱えて部屋から出て行く。たぶん部屋に片しに行ったんだろう。
それを見送ったアルベルトがソファから立ち上がりこちらに近づいてくる。


「なんの話をしてたんだい?」

「ん?...あぁ、きっとお前さんたちに言ってもわからん内容さ。」


なんとなく察した。
本の虫のアルベルトと物事の吸収が早いなまえ。知識人の話す内容なんだから僕たちから少し離れてるんだろうな、と。それが硬派なアルベルトなら尚更。


「なまえが本を抱えてたから...なにかの論文かな...」

「そう。深層心理と睡眠が人体にもたらす影響と関係だ。なまえも知っておいて損はしないだろう。」


みんな唖然としてる。
アルベルトの言い分もわからないことはないが、僕ら凡人には次元が違いすぎる。
だがアルベルトらしいと言えばアルベルトらしい。彼なりの、なまえへの愛情だ。それが伝わる人間は限られてはいるけれど。

そしてアルベルトは何事もなかったかのようにリビングを出ていく。彼も夕飯の準備に参加するようだ。

階段から誰かが降りてくる足音がする。さっき本を置きに行ったなまえだ。
再びリビングに戻ってくると今度は僕とちゃんと目を合わせてくれた。やっぱり嬉しそうに笑ってる。


「なまえ、明日は楽しんでおいで」


僕はなまえが好きだ。
だから笑っていて欲しいし、幸せにもなって欲しい。
でも残念ながらそれは僕の役目ではない。ただ、それじゃちょっと悔しいから道筋ぐらいは、示したい。

君は、僕の大事な家族だから

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