つい一週間前まで幼馴染の後輩たちにテスト勉強に付き合っていたというのに。完全に油断していた。私たちにもテストがあったことを。
後輩たちが、早川くんと黄瀬くんが赤点じゃないテストを見せてくれたことを自分のように喜んでいたというのに、今じゃ私自身がテストに追われていた彼等のようになっていた。



「...っ、」



返ってきたテストを見て絶句した。ここまで出来が悪いのはもしかしたら初めてかもしれない。
いや、別にどこかの部活に所属していてテストが出来なければ試合に出れないとかそういうのはないけれど。
と、とにかく後輩があんな点数なのに私がこんなじゃ顔向け出来ない。手に持ったテストを強く握りそのまま机の奥底に押し込んだ。



「なーに隠そうとしてるのかなー」



その瞬間後ろから声をかけられてびっくりした。自分でも大げさだと思うほど肩を上下させた。その姿を確認する前にその手が伸びる、そして机の中を漁って私を絶望の底に付き落としたテストが再び顔を見せた。
私をテストをさらっていったのは誰なのかようやく顔を見ることが出来た。森山くんだ。



「...めずらしいなみょうじがこんな点数悪いのって」


「早川くんと黄瀬くんのテスト結果が嬉しくて仕方なくて、自分のこと棚上げしてました」


「あいつらの勉強、すごい頑張って付き合ってたもんな」



私の結果を知って満足したのか彼の手の中のテストは再び机の中に帰っていった。彼はこういうところが優しい。そのまま笠松くんとか浩志くんとかには黙ってて欲しいけど同じバスケ部だしばれるのも時間の問題なんだろうな、と諦めてる。



「でも、まあ、いいんじゃねぇの?」



こうやって声をかけてくれるんだからやっぱり森山くんは優しい。誰かにそう言ってもらえるとなんだか安心する。でも今の私には彼の言葉に頷くことしかできない。やっぱり忘れられない、あの忌々しいテストの顔。



「赤点じゃないし?部活停止でもないし。」


「...うん」


「そんなに気落ちすんなって。...あ。帰りにケーキでも奢ってやるからさ」


「...。...うん?」



ケーキ?なんでケーキ?いい点なんてとってないし、寧ろ責められてもいいレベルだ。なのに優しい彼は私にケーキをくれるのか?不思議に思って森山くんの顔を見れば彼は笑ってくれた。



「みょうじにそんな陰気くさいのは似合わないからさ、元気だせよ」



...みんな彼のこと残念なんて言ってるけど、森山くんはやっぱりかっこいい。
なんだか残りの授業も乗り切れそうな気がしてきた。ありがとう、森山くん。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -