「お疲れさん」


「んー」



力尽きたように机に突っ伏したなまえ。実際力尽きたんだから仕方ない。正面には未だ教科書とノートを交互に見ている後輩が二人。まあこっちはもう大丈夫だと思う。なんたって四人がかりで教えたんだから。
なまえの向こうには似たような状況の森山がいて、俺の隣には頭を抱えている笠松がいる。
辺りを見回せばいつもはそれなりに人のいる図書室がいつも以上に静かだった。心なしかカウンターの中の生徒がこちらをものすごい目で睨んでいるような気がする。



「お前らこれで明日の小テスト赤点だったらシバくぞ。本気で。」



そう。なんで三年の俺らがこんなに必死になってるのか、それはこいつ等が明日小テストを控えているから。赤点なら再試。しかも練習試合の日に。
再試で試合出れないとかいい笑い物だ。だからこっちは必死になった。俺だって部活に関係ないけどそれなりに勉強のできるなまえ引っ張ってきたんだ。



「ほら、帰りにアイス買ってやるから」


「...アイス、」


「...。...また甘やかすー」


「いいんだよ。バスケ部でもないのに引き受けてくれたんだから」



ぽんぽんと頭を軽く叩いてやるとアイスという言葉を口にすれば今まで死んでたなまえがむくりと体を起こした。その向こうから森山が口をはさむが、俺にだって甘やかしてるっていう自覚はある。でも美味そうに食うの隣で見てるとなんかもういいかなってなってくる。



「早川くんも黄瀬くんも明日のテスト頑張ってね」



俺が買ってやるであろうアイスだけを糧としている今のなまえはもうすぐ範囲の勉強が終わりそうな二人に声をかけた。さっきまでの死んでたなまえからは想像できないほどの笑顔で。前々から思ってはいたがこいつは現金な奴だ。
でも正面の後輩はその笑顔に目を輝かせて感激している様子。「頑張(り)ますっ!」とか「頑張るっス!!」とか意気込んでペンを動かす。さっきより少し早くなってる。あれで頑張れるこいつらもなまえに負けないぐらい現金な奴だとは思うけど、見てて楽しいからよしとする。









「先輩!これ、これ見てほしいっス!!」


「お(れ)も!赤点じゃないです!!」




それから数日後休み時間になって三年のクラスに押し掛けてきた二人の手には返却された小テストの用紙。それには赤いペンで赤点より上の点数がはっきりと書かれていた。どうやらこれで練習試合に恥をかかなくてすむらしい。一安心だ。
それを見たなまえは立ち上がって後輩たちと一緒に喜んでいる。というかお前たち、これをここに見せに来る前に



「さっさと監督に出してこい!!」



あ、言うより先に笠松が言ってくれた。というより先に足が出た。

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