俺は覚悟を決めた。

あいつを倒すにはこれしかない。俺は部屋にあった一つの写真立てを手にすぐに部屋を飛び出した。アパートの階段を一気に駆け上り屋上を目指す。
止まない雪のせいで寒いはずの体温が上昇していく。きっと階段を上っているせいだけじゃない。いまからこんなでどうするんだよ!


「...いたっ!」


たどり着いたアパートの屋上から見えた敵の姿。ここより一階分低い少し遠いビルの上にやつはいた。大丈夫だ、ここからならあいつに届く。

あいつが今回持ちこんだ能力は"心を読む能力"
どんなに強くたって心を読まれれば次どんな攻撃をしてくるかわかってしまう。そしてどう防ごうとしているかもわかる。これまでとは比べ物にならないぐらい厄介な能力。
被害は拡大する一方。でも対抗策も打てない。どうすれば、とみんな考えてる中、俺は思いついてしまう。


「そんなに俺の心が見たいなら、今から存分に見せてやる!!」


それは俺にも大きなダメージがある。だが今はそんなこと言ってられない。
俺は部屋から持ってきた写真立てをこれでもかってぐらい空に掲げた。その写真に写ってたのは、同じクラスの、なまえだった。


「なまえっ!好きだーーー!!」


エクソダスが始まる前から好きだったんだ!もう好きなんてもんじゃねえ!お前のことは全部知っておきたい!なまえを抱きしめたいんだ!これでもかってぐらい強く抱きしめたい!心が読まれるとか関係ねぇ!全部かき消してやる!なまえ!好きだ!もう好きなんてもんじゃねぇ!愛してるんだ!この心の叫びを聞いてくれよ!なまえ!クラスが一緒になってから、お前のこと知ってから俺はずっとお前のこと目で追ってた!いい加減気付けっての!そんでこっち向け!お前がこっち向けばこんな思いしなくて済むんだ!お前なら俺の気持ちに気付いて答えてくれるんだろ!お前を俺のものにしたい!お前の物は俺のものだ!誰が邪魔してきたってお前のこと奪ってみせる!他になまえ狙ってるやついたらでてこい!全員返り討ちにしてやる!でもお前のことだから止めに来るんだろ!だったら俺は戦わない!お前を抱きしめるだけだ!お前の願いならなんでも叶えてやる!それが俺の喜びだ!だから答えてくれよ!なまえ、なまえ!


「馬鹿ぁ!!」

「ってぇ!」


後ろから頭を思い切り殴られた。しかもグーで。
誰だよ!俺の一世に一大の告白の邪魔する奴は!と勢いよく振り返れば、そこには顔を真っ赤にした、なまえがいた。
なんでこいつがいるんだよ。つかなんか怒ってねぇか。こいつが聞こえてるわけねえんだ。だって俺は、あいつに向かって叫んでたのに。


「聞こえないわけないでしょ!!あいつの能力でみんな聞こえてたんだから!!」

「...いや、その、だからさ、」

「なんてことしてくれたのよ!!」


なまえがもう一発拳を振りかぶる。俺は間一髪のところでかわして屋上から逃げようと走りだす。一刻も早く逃げ出したかった。目も合わせらんねぇし言葉も出てこない。

なんてことしてしまったんだと後悔してももう遅い。今の俺はさっきのなまえみたいに、いやそれ以上真っ赤になっているだろう。
敵がどうとかもうそんなんこと忘れてた。とにかく俺は全力で逃げたいし全力で隠れたかった。

でも満更でもなさそうななまえの顔を一瞬見れて嬉しかったりもする。




オーバーマン
   キングゲイナー


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