「おい、なに下に向かって掘ってんだよ」

「え、だ、だって下にしか掘れないよ...」

「だから言ってんだろ。俺たちが掘るのはあっちだって」

「あっちって...」


青峰さんが指さすのは上。その上には見たことのない"空"が広がっているんだと聞いたことがある。
でもそんなの無理に決まってる。だって外にはここにはないとても恐ろしいものもあるんだと聞いた。生憎私にはそれに立ち向かっていく勇気がない。


「んだよ。外に出たいって言ったのはお前だろ?だったらあっち掘れって」

「言ったけど...!...怖いよ...」


下に向かって掘っていたスコップを止める。今の私は下に向かって伸びていくこの穴と一緒だ。
本当は、上に向かって進んでいきたい。でも未知との遭遇が怖い。私の足はすくんでしまう。いつかは進むことさえやめて立ち止まってしまうのだろうか。


「そんなこと言ったってしょうがねぇだろ。今から怖がってたって仕方ねえ、怖いかどうかなんて見てから決めろ。」


私にも青峰さんみたいな勇気があれば、見える世界は変わっていただろうか。
青峰さんは私の持っていたスコップを奪い取って私がさっきまで掘っていた方向とは違う方向、上を掘り始める。今の私には、それを見ているしかない。

最初はすごいと思った。
穴の中に住む私たちの日常に割り込んできた異端者。変化を求めない私たちと違って彼は常に刺激を求めていた。そんな彼に憧れた。だからずっとその背中を追ってきた。でも、結局追いつけないまま。


「ほら、掘れよ」

「...無理、だよ」

「出来るって」

「無理なのっ!」

「できるっつんてんだろ!!」


青峰さんが声を荒らげた。狭い穴の中に響いた声にびっくりしてしまう。青峰さんを見れば、荒らげた声とはかけ離れるぐらい優しい顔をしていた。


「信じろよ!お前を信じてる俺を!!」


スコップを押し付けられる。そして今まで掘っていた上に向かう穴を指さす。

この人は今、確かに私を信じてると言った。

やっぱり青峰さんはすごい人だ。
彼が言えばなんでも出来てしまいそうな気がする。
うん、困ったらその時考えよう。今から悩んでても解決なんかしない。
ゆっくり、力強く頷いた私は青峰さんが上に向かって掘っていた穴にスコップを突き刺した。




天元突破
   グレンラガン


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