ただお前が好きなだけなのに。
俺が好きになったのはお前なのに。人間じゃないとか、俺たちの敵だとか、そういうのも全部ひっくるめて、お前が好きなんだ。
だから俺は全部振り切ってお前を迎えに来たんだ。
「なまえ、なまえー!!」
立ちふさがるのはお前の"同族"。
全部倒してかなきゃお前にはたどり着けない。
それが罪だと言われても、俺はそれを受け入れる。
だから、だから、俺の声に答えてくれよ!
今まで本当にいろんなことがあったけど、いっつも隣にはなまえがいたじゃんか!
もう一回、違う、これからも、ずっと、そんな風にいさせてくれよ!
(強請るな、勝ちとれ、さすれば与えられん)
手を伸ばすのはやめない。やめてしまえばきっと何も勝ちとれない。
俺はもう貰ってばかりはやめる。だから俺はお前の名前を叫ぶ。
「っ!...なまえ!」
「...。...和成、くん...!」
「迎えにきたぜ!」
一人膝を抱えていた。そばにいってその手を差し出すが彼女はその手をとってくれない。
なんでだよ、そうして欲しかったんだろ、助けてほしいって言ってたじゃんか
「...私、ここから出れないよ」
「な、に言ってんだよ...」
「だって、そんなことしたらっ、みんな...!」
膝を抱えている腕を強める。ただでさい小さいのにもっと小さくなってしまう。
お前、前からそうだったよな。何考えてるのかわからない顔してるのに、本当は仲間のこととかこれからのこととか、俺以上に考えている。
もうさ、そういうの考えなくたっていいじゃんか
「...なまえはさ、どうしたい?」
「わ、たし?」
「うん。...俺はなまえと一緒に帰りたい」
なまえみたいに先のことなんて全然考えてない。でもなまえがいればいなんとかなるんじゃないかって、なんの理由もないけどそう思える。
...きっとさ、なまえもそうなんだろ?
「...。...わたし、だって、かえりたいっ!」
やっと顔を上げて俺を見てくれた。涙で濡れてたけど、なまえも俺と同じだったんだな。うん、安心した。安心して座ったままのなまえを抱きしめる。あったかい。やっとなまえに会えた、触れられた。ゆっくりとなまえも俺の背中に腕を回してくれる。
「じゃあ、帰ろうぜ」
「うん、帰るっ!...和成くんと一緒に帰る...!」
一層強く抱きしめてやればなまえも返してくれる。
ああ、帰ろう、一緒に帰ろう。一緒いにいればもう怖いものはないだろ。
ゆっくり顔を上げれば、そこはお前を苦しめる戦いの世界じゃなくて、約束した戦いのない世界。なあ、見えるだろ、あの月に俺たちの名前がある限り、誰も俺たちを苦しめることなんてできないんだから。
交響詩篇
エウレカセブン