「みょうじー、聞いてっかー」


今年入ってきた一年はすごいやつばっかりだ。すごすぎて轢きたくなることもある。でもこのマネージャーは例外だ。まあ女子だからってのもあるけど、仕事が出来て先輩も敬えてて真面目な奴。真面目すぎて人の話聞いてないときもあるけどな。


「みょうじ!」

「っ、は、はいっ!」


ベンチに座ってひたすらノートに何か書きこんでるみょうじの頭に手を乗っけるとびっくりして肩をびくつかせながら俺を見上げた。膝の上のノートの上に乗っかっていた筆箱が床に落ちていた。


「...聞いてなかったろ」

「...。...すみません」

「まあ仕事しないで聞いてなかった訳じゃないからな」


こんなことはしょっちゅうだ。集中してると自分の世界に入ったみたいにそれ以外のことが入ってこない。だからもとに戻すには肩をたたいたりして気付いてもらうしかない。でっかい声出しても気付かないんだもんな、逆にすごいとおもう。
床に落ちた筆箱を拾ってやるとキーホルダーが揺れてるのが目に入る。橙色の飾りのついたやつ。キーホルダーと燈山を見比べているとみょうじが不思議そうに俺をみている。


「宮地先輩、どうかしました?」

「ん、ああ、なんでもねぇよ」


我に返って持ったままの筆箱を持ち主に返す。それを受け取ったみょうじは自分の横、ベンチの上に置く。俺の視線は相変わらずベンチの上に転がるキーホルダー。


「なあそれって買ったのか?」


それを指さして俺は聞いてみた。するとみょうじはキーホルダーを見てから俺に首を振った。違うという意思表示だ。


「これ、昔貰ったんです」

「旅行のお土産かなんかか」

「じゃなくて、中学受験頑張れって真太郎くんが」

「...は?」


こいつ今真太郎っつったか?こいつの言う真太郎っつったら一人しかいねぇじゃねえか。俺はワガママ使って一人シュート練習する緑頭を見た。俺が指を指すとみょうじは嬉しそうに頷く。...もう衝撃的すぎて何も言えねぇ。


「その頃いろいろあったんです。元気がないときに真太郎くんがその日のラッキーアイテムを私にくれたんです。」


嬉しそうに話すみょうじ。というか中学受験つったら小学生の頃の話かよ。あいつ、その頃からラッキーアイテム持ち歩いてたのかよ。
...というか、ラッキーアイテム渡すってあいつすげぇな。この一年あいつを見てきたけどラッキーアイテムへの執着がすごいってことはよくわかった。それを渡すなんて、簡単には考えられない。これは、高校生的な思考で考えると、それしかねえ、理由はねぇけど、きっとそうだ、


「はいはいリア充爆発しろ」


俺はため息をついた。これで付き合ってないとか冗談もいい加減にしろ轢くぞって感じだ。そう思ったのはきっと俺だけじゃないんだろうなってよくわからない自信があった。

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