「あ、なまえちゃんいた!真ちゃんも!」


誰もいなかった廊下に知った声が響く。顔を上げれば目の前には口数の減らないチームメイトが立っていた。


「今日はなまえちゃんに慰めてもらってたのねー。俺いらなかった?」

「勝手なことを言うな。だがお前がいらないのは確かだ。」

「ちょ、それひどくね!」


高尾はそう言い笑いつつなまえの隣りに腰を下ろす。平均身長より高い男子二人に挟まれたなまえは一般的な女子の身長なのに小さく見えた。


「いいもんね、今日の俺はなまえちゃん慰めにきたんだから!」


この子がこの子なりに頑張っていたのを見てきた。その姿を見て感激もした。それも一回二回ではない、思い返せば練習の度だったかもしれない。


「わ、私は大丈夫だよ...!それより二人とも疲れたでしょ?先輩たちのところ帰ろうよっ、」

「俺たちこそ大丈夫だからさ、なまえちゃんは少し自分のこと大事にしよっか」

「...まったくなのだよ」


立ち上がり控室に向かおうと立ち上がろうとしたなまえは両側の選手にそれを阻まれて再びベンチに腰を下ろす。二人の言っている意味がわからない、と二人を交互に見るが真意はわからない。


「俺たちがこんな悔しいんだから、なまえちゃんも一緒じゃない?」


そう言う高尾には全部わかっていたのかもしれない。いや、高尾じゃなくてもみんなわかっていた。彼女がいたから強くなれたこと、欠かすことのできない大事なチームメイトだということ。一番わかってないのは彼女だということ。


「...く、悔しいよ。でも、私みんなみたいに練習してたわけじゃないし、一緒にしちゃ駄目だよ...」

「まったく、お前はいつも言い訳ばっかりなのだよ」

「なっ、だって、マネージャーだよ...?...それに、」

「今度はなんだ」

「先輩たちのほうが、頑張ってたの、知ってるから」


やっぱり彼女は鈍感だ。周りのことをあれだけ察すことができても自分に関してはからっきし。でなかったらそんなこと言わないし、彼らの言葉の意味を察することができるのに。高尾はそんな彼女を彼女らしいと思わず吹きだして笑ってしまう。


「やっぱなまえちゃんはなまえちゃんだわ...!」

「...た、高尾くん?」

「ねぇ、なまえちゃん。さっき"俺たちは悔しい"的なこといったじゃん?」

「う、うん」

「あれね、俺と真ちゃんてニュアンスじゃなくてさ。バスケ部みんなって意味のニュアンスだったんだけど」


その言葉に高尾は笑い、なまえは目を見開き、緑間は静かにため息を漏らした。見開いたなまえの目には涙が見える。それは見ていて心苦しいものではなく、寧ろ清々しく感じられた。その瞳を隠すように少し俯けば床に斑点ができる。彼女はようやく実感した。試合が終わったのだと。

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