僅差
ワンゴール
3Pシュート
言うなら力が及ばなかった。
応援席からすすり泣く声が聞こえる、喜びの声が聞こえる。対してコートの中は静まり返っていた。だが数秒遅れてコートの中にも歓喜が湧きあがる。
別のベンチでは選手が、監督が、喜ぶ声が聞こえる。その声が現実を突き付けてくる。
おれたちはまけたのだ。
だが誰ひとり膝を折ることなかった。それは王としてのプライドか、個の執念か。
「負けたのだよ、」
控室の外に設置されたベンチには先程までコートに立っていた長身の男。俯き表情は窺えない。隣に座るのは先程までベンチに座っていたマネージャー。
「きっと相手も人事を尽くしたんだよ」
彼女は静かに答えた。
知っていた。昔から誰よりも努力をする姿を見てきた。確かに彼には才能があった、だがそれに隠れてしまっていた努力はそれ以上だった。少し周りと違う努力だったから衝突することもあったけれど、勝ちたい気持ちは一緒だから、また頑張っていた。
「大丈夫、負けることは恥じゃない。」
そう思えるようになった真太郎くんはもっと強くなれるよ