みょうじ なまえ

付き合いは小学校から、周りからは幼馴染と言われているが実際のところあいつとクラスが一緒になったことは小学校生活一度もない。たまたま家が近いだけだった。
だがあいつは俺のことをよく知っている。当時はたいして気にしていなかったが、それは俺だけだったらしい。

朱染なまえには人並み外れた集中力があった。

それに気付いたのは中学受験を控えていたある日のこと。あいつはずぶ濡れのまま俺の前を歩いていた。どうしてとその手を後ろから引っ張った。
振り返ったその顔は俺の知ってる笑った顔ではなく涙で濡れた顔だった。


「真太郎くんと一緒の学校行きたいから頑張ってる勉強したらね、怒られちゃった」


あいつは腫れた目で笑っていた。こんな顔もするのかと冷静だったところもあった、だが見ているこっちが苦しかったのは今でも覚えている。あいつは俺のことを知っているのに、俺はこんなにも知らない。

俺はポケットに入っていた橙色のキーホルダーを掴んだままのその手に押し付けた。腫れた目は笑うのをやめて驚いて俺のことを見上げていた。


「それをやるから、勉強頑張るのだよ。」


そう言ってやった。
あいつは手に押し付けられたキーホルダーと俺を交互に見やって、そして笑った。


「ありがとう、真太郎くん!」


さっきの苦しさはもうなかった。あいつには泣いた顔なんて似合わないな、と思った。
ラッキーアイテムを譲っただけなのにこんな喜ばれるなんて思っていなかった。それだけで喜んでもらえるなら、俺はお前がまた泣かないように運勢を補正してやるのだよ。


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