教室に帰ってきてからのなまえの様子がおかしかった。
提出しに行ったはずのプリントは持ったまま帰ってくる。授業が始まってペンが動くことは一回もなかった。終礼が鳴っても一人で教室を出て行ってしまう。何があったのか聞くにもその前に見失ってしまう。


「高尾、なまえを見なかったか」

「なまえちゃん?さっき教室出てったけど...」


教室を出て廊下を見渡してみるがそれらしい姿は見えない。高尾も廊下に出てくる。どうしたの、と俺を見て問いかけてきた。


「職員室から帰ってきて様子がおかしかったのだよ」

「...先生になんか言われたとか?」

「提出しにいったプリントを持ったまま帰ってきたのだ、職員室には入っていないだろう」

「じゃあ、呼び出されちゃったとか...?」

「誰に」

「先輩に」


他の生徒の騒がしい声しか耳に入ってこなかった。高尾が口にしたその言葉の可能性が高すぎる。というか言った本人がオロオロしてどうする。
とにかくどうする、この調子じゃ次の授業にいるかすらわからない。探すにしてもどこから手をつければいい。考えるだけで時間がすぎていく。そのときだった、後ろから俺と高尾を呼ぶ声が聞こえてきた。


「宮地さん、どういたんですか?」

「おい、燈山いるかっ」

「俺たちも今さがしてるんすよ!」


高尾が変わりに答えると宮地さんは今までに見たことないくらい顔を青くした。


「宮地さん、なまえがどうしたのか知っているんですか」


今度は俺が聞くと宮地さんは重く口を開いた。


「あいつ、さっき職員室の前でこくられてたんだよ!」


その答えは俺たちが想像していたものよりも幾分かましなものではあったが、問題にはちがいない。高尾が声を出して驚いている、そして詳細を聞いていた。

正直俺はそれどころではない。
今までそんなことは一回もなかった。いや、俺が知らないだけでなまえは幾度となく経験していたのかもしれない。きっとなまえは言葉の意味を深く考えるために"集中"するだろう、周りが見えなくなって誰かに言うことも忘れる、今の俺たちと同じだ、考えるだけ考えても答えなんてでてこない。それでも答えが出るまで"集中"するのがなまえだ。答えが出ないことに苦しみ、できるまでやめることはない。だから俺はあいつを苦しめないために最善を尽くしてきたというのに、俺なら、苦しめるような問いは与えないのに、


「真ちゃん」


高尾が俺を呼んだ。我に返ってみると高尾も宮地さんも俺を見て小さく笑っていた。一体俺が知らない間に何が起きたというのか。


「答えはでてるんじゃない?」


俺はようやく気付く。きっとずぶ濡れになったあいつに会ったときから出ていた答えだろう。改めて思うと、気恥ずかしいというのも、ある


「もちろんなのだよ」


今なら、はっきり言える、あの頃よりもはっきりと、俺は、

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