セイバートロンで目を覚ましたはずだ。だが私の知っているセイバートロンとは違った。これが時の流れというんだろう。私は随分長い時間世界から切り離されていた、ということを改めて実感した。
「スペリオンの知ってるセイバートロンはどんな感じだったの?」
過去のセイバートロンに興味を持ってくれたひとりであるなまえは私に質問を投げかけてくる。
私はそれに答えていく。それだけの関係だったのにすごく居心地がよかった。
「私に聞かなくても調べればもっと詳しいことがでてくるんじゃないか?」
何気なしにそう返してしまった日、なまえは今までに見たことのない悲しい顔を見せた。そしてなまえはこう返してくれた。
「私ね、もともとセイバートロンで生まれたわけでも育ったわけでもないの」
彼女がこの星にアクセスできるのはほんの一つまみ程度、過去を知ることが出来るところまでアクセスが出来なかったのだ。
それが指し示す意味は、"彼女は信用されていない"。
なまえと話をするようになって間もないが、彼女は誠実で優しいとてもいい子だ。他の仲間と話す姿もとてもうれしそう。そんな子がどうして"信用されていない"のか。
「うーん、それを話すとすごく長くなっちゃうな...」
私は思うことをそのまま言葉にした。するとなまえは苦笑いをして答える。それに、と続けた。
「知らないほうがいいと思う。...きっと私のことが嫌いになるから」
どうしてそんなことを言うんだ。どうしてそんな悲しい顔をするんだ。
そう思うとなまえが私に聞いてもいないのに私は勝手に話しだす。まだ誰にも話していないこと、たとえば兄さんのことにデストロンにいるビルドロンにブルーティカスのこと、ほかにもたくさん、セイバートロンのことでなく、私自身のこと、
「...ここまで聞いて、なまえは私のことが嫌いになったか?」
なまえはゆっくり首を横に振る。それを見て私は嬉しくなる。知ってもらえることの喜びをかみしめていた。
「じゃあきっとなまえも大丈夫だ」
「...大丈夫じゃないよ、私のはもっと、もっと、酷いことだもの」
何が彼女をこんなにも苦しめているのだろう。私には彼女を救うことが出来ないのだろうか。
...違う、他の仲間たちは彼女を苦しめている理由を知っている。その上であんなに楽しそうに過ごしているのだ。
「君は彼らとわかりあうことができてるじゃないか」
私にも出来るはずだ、と確証のない思いが私を突き動かす。
「なまえは言ってくれたじゃないか。」
暖かいその光は、凍えた心をすっかり溶かしてしまった
「スペリオンは私のこと知らないの?」
「すまない、この場にいる者を誰も知らないんだ」
「...それってすごく寂しいことだよね」
「そんなことはないさ。みんな私のことを仲間として迎えてくれているのだから」
「"嘘"はいけないよ!」
そういって私の手を引いてくれた。そして"嘘"を許しあえるのが仲間であり友人であるのだと教えてくれた。
...すまない、なまえ。
本当は知っていたんだ。君が"嘘つき"であることを。でも私に仲間や友人という言葉を教えてくれた君が嘘だとは思えない。
そしてたくさんのことを教えてくれた君に教えることができなかった。
「どんな君だって、私は、許そう、だってわたしたちは、」
なかまなのだから