戦争が終わり体が損傷することは少なくなった。損傷する要因としては作業中の事故、組手をしていたり、と平和的なもの。でも、私だけはちがっていた。


「...っ!」


光の差し込まない最下層、幾多の扉を抜けさらにその奥、壁に背を預け膝を抱えていた。
飛ぶ者の象徴である翼は無残にも折られ片翼のみの存在となってしまっている。折れた翼はバチバチと火花を上げている。そのほかにも節々から同じような火花が上がっていた。


「...いたいなぁ」


揺らぐ空色の瞳。しかしその事実に嘘をつこうと自らの肩を抱きしめた。触れた肩にまた火花が散る。


「みんなも、よく飽きないよね」


いつまでたっても変わらない。"嘘つき"だと罵られ、酷いと"敵"と認識され銃を向けられる。今日は特に"酷かった"。思い出しただけで体中から火花が激しく散る。呆れたように笑いを零すと逆に虚しくなってくる。"昔"はこんなことなかったのに。


「...あ、」


そうだ。その"昔"から続く私を受け入れてくれた彼だ。数少ない私の友人。彼ならきっと私の話を信じてくれる。思い立って既に行動を起こそうとしたが、言うことを聞いてくれない。


「...うん、まあ、わかってはいたけど」


きっと攻撃を受けて通信の回路がいかれてしまったんだろう。自分で直せるわけじゃない、かと言ってこの惑星の技術で直せるかどうかも怪しいところ。なんせ私はこの惑星からしてみたら"異星人"なのだから。結局のところ自己修復機能を信じて待つしかないのだ。
生い立ちどころか性能まで違うのだ。嫌われたって仕方のないことなのだ。でも、でも、
嫌うどころか好いてくれたトランスフォーマーもいる。そう思うとみんなもそうなるのでは、と期待している自分がいる。


「さびしい、な」


何も変わらない。現状も過去も未来も。何が事実で何が嘘なのかわからなくなってくる。そこに答えがないことを分かってるはずなのに求めずにはいられない。ああ、私は彼等のお陰で変われたのだと勘違いしていたのだ。

すると先程自分が逃げ込んできたきた扉が外側から強く何度も叩かれる。ガンガンと金属と金属がぶつかり合う音。その音はさっきの恐怖を彷彿させた。体のいろんな所が痛いのにも関わらず体を小さくしようと強く膝を抱える。

ガンガンと音は止まない。それどころかかみ合わせの悪い扉の隙間に指をねじ込み無理矢理開けようとしてる。恐怖だ、恐怖でしかなかった、あああの扉から光が差し込めばあの悪夢がまたやってくるんだ。


 「なんだ、全然、開かねえ...!!」


ガタガタ大きく揺れる扉、金属のぶつかり合う音の隙間から声が聞こえた。...あれ、この声は知っている。


 「しゃらくせぇえ!!」


金属の音を打ち消す声を上げた途端、扉は横にスライド、大きな音をたてて倒れた。手の入っていない再開発地区、使用用途の分からない小さな部品たちが衝撃で宙を舞う。その向こう側に立っていたのは、間違いなく彼。


「スカイファイヤー...?」

「おう、迎えに来たぜ!」




あの日あの時あの場所で、君だけが私を見つけてくれた




どうして迎えに来てくれたの?
と私は聞いてみた。彼に抱き抱えられながら最下層から出ると少しまぶしかった。
いないやつを探すのはあたりまえだろ?
そう返されました。リペアルームに向かっているのはすぐに分かった。
いらない、と私が暴れてもそんな羽じゃどこにも行けないだろうと無理に抑え込まれました。
バチバチ火花が上がります。でもさっきまでみたいに痛くはない。

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