彼女はサイバトロンではなかった。しかしデストロンでもなかった。だったら何なのかと聞かれたなら"嘘つき"と答えることができた。

彼女の名前はなまえ。ユニクロン戦争以前からサイバトロンとして戦い戦果をおさめてきた。しかしその真の姿は"ダブルフェイク"という名の嘘をつくために生まれてきた者だった。

二つの顔と二つの嘘。

嘘をつくために生まれてきた彼女の言うことはすべて嘘。自分を信じてくれる仲間にかける言葉も、自分の心にさえ、嘘をついた。

何が事実で何が嘘なのかわからなかった。そこに真実がないことは分かっていた。だが疑わずにはいられない。嘘は彼女を確実に苦しめていた。


だが嘘つきを信じてくれる者がいた。


 「俺はお前を信じてる!だからお前は俺を信じろ!」


そう手を伸ばしてくれる。


 「でも私は嘘つき、またみんなを騙すことになる」


そう言い膝を抱え顔をうずめてしまう。


 「嘘なんて誰だってつくもんだろ?俺だってつくし若造だって!」


そう膝を抱える手を力強くひく。


 「いやだよ、もうみんなに嘘つきなんて言われたくない」


そう立たされ顔を俯ける。


 「それだ!それが"本当のお前"だ!」


強くひく手を離した。すると彼女はゆっくりと顔を上げる。瞳の色は平和を夢見る空色。

そうだ、彼女はいつだって"本当の言葉"を言っていた。その瞳はいつだって"本当の彼女"を写しだしていた。


 「"本当の私"を受け入れてくれる?」


差し出された手に己の手は重ねない。


 「たとえ宇宙がひっくり返ってみんな敵になっても、俺は受け入れる!」


彼女の手を掴む。強くひけば彼女は一歩踏み出す。それを見てもっと引けばもう一歩。続けたら走りだしていた。

そして彼女たちは"星帝"という檻から果てしない闇へと飛び出した。




モノクロームの街の中、君だけは色を持っていた




ありがとう、ありがとう、ほんとうのわたしをつれだしてくれて

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