目を開くと天井だった。どこかの宿屋なのだろうか。そういえば何をしていたんだっけ。ノードポリカ、"Regaey"、"Yeager"、パパのこと、女の子が二人...
「...あれ、」
そのあと、どうしたんだろうか。イエガーさんにパパのこと聞こうとして、二人の女の子が立ちふさがって、どうしようかと思って後ろに下がって、それで、それで...
「...。...あれ」
ほんとうに、どうしたんだろう。その先、私は一体何をしたんだろう。私が知らない間に私が何かをしでかしたのだろうか。それだったら今ここにみんながいないことに説明ができるはず。
「...。...、...あれっ」
みんながいない、ただそれだけで、なんだか悲しくなってきた。前までずっと一人だったはずなのに、慣れていたはずなのに、みんなと一緒の時間なんてそれに比べたらずっと少ないはずなのに。
「あら、起きて早々目に砂でも入っちゃった?」
どうして気がつかなかったのだろうか、一番近くにうさんくさいおじさんがいることに。前と変わらない姿でそこに立っていたのは、まぎれもなくレイヴンさんで
「砂...」
「そ、砂。ここ、砂漠の街だからねぇ」
目をこすれば、確かに少し痛かった。彼の言うとおり目には砂が入っていたらしい。じゃあさっきのみんながいなくて悲しくなってきたあの感情はどこからやってきたのだろうか。
「...というか、砂漠の街ってことは」
「ここ、マンタイクだよ」
「...あぁ、どおりで、」
どおりで暑いと思った。まだ砂漠の入り口だから嘆くほどのものではないけれど、久しい暑さだった。
「あれ、なまえちゃんは暑いーって言わないのね」
レイヴンさんは隣のベットに腰掛けてそう聞いてくる。その顔はこの暑さをものともしていない笑顔だった
「だって私、ここに住んでましたからね」
⇒(もうそんなことも昔の話)
「それ、初耳だわ」
「そりゃ、誰にも言ってませんからね」
「...いつから住んでたの?」
「そうですね...十年ちょっと前ぐらいですかね」
「...そうなの」
「レイヴンさん、どうしたんですか?暑さにやられたんですか?」
「いやね、十年ちょっと前だと、俺もここきたことあるな、ってさ」
「...そうなんですか?」
「そうなんですよねぇ」