アーセルム号を離れ、船はようやくノードポリカに到着した。
しかし"天を射る矢"の仕事であるベリウスへの書状が渡せなかった。次の新月に会いに来るように代理人のナッツは言った。その日は疲れもあって宿屋に直行だった。


「"遺構の門"?」

「そう、五大ギルドの」

「ふーん...」


翌日が問題だった。闘技場を出てみれば血の気の多い者同士の喧嘩を止めようとする場にそぐわない小心者。カロルに聞けば彼は五大ギルドの一つ"遺構の門"のラーギィという人らしい。


「なまえもギルドの一員なんだから覚えておいたほうがいいかも」

「うん、覚えておくことにする」


なまえは思い出すように指折り数えた。これで五大ギルドの内四つと関わりを持つことになる。


「それにしても"凛々の明星"は結成直後に大御所と関われてすごい強運だよね」

「僕もびっくりだよ!ユーリはいつも厄介ごとしか持ってこないからなおさら!」


後ろの方でこの会話が聞こえていたのかユーリが悪かったな、と棒読みしているのが聞こえた。それが聞こえているのかいないのか、なまえは折ったままの指を見つめていた。


「...なまえ、どうしたの?」


いつもと明らかに違うとカロルは気付いた。声をかけるとゆっくりとこっちをみてどうしたの、と問う。


「いや、なんだか元気ないから」

「...ううん、ちょっと考えごとしてただけ!」


折った指を解けばそこにはいつもの笑顔があった。カロルはそれをみて一安心、そしてその笑顔につられて笑顔になる。




⇒心に染みが広がっていく




(...うーん、Regaey-ラーギィ-さん、ね...。)

(というか、こう、どこかで会ったような、ないような)

(へんな感じ...)


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