カウフマンのギルド"幸福の市場"と協力してノードポリカに向かう途中、魚人に襲われたり、パティが魚人の腹の中から出てきたり、トクナガが負傷したり、何かと不幸続きだが、ここにきて霧が濃くなるという不幸も連れてきた。
「ユーリがまた何か連れてきた...」
「おいこらなまえ。俺が何連れてきたって?」
「こんな霧が濃くなってきて...。ユーリが何か連れてきた以外なにがあるっていうの?」
「人を疫病神みたいに言うなよ」
ゆっくりと進む船。だが霧はその船の行く先を遮るようにどんどん濃くなっていく。
「ちょっとあんたたち!そんな言い合いしてる暇ないでしょ?!」
リタが慌てて前、前...!と慌てる。言われた通りに前を見れば、船よりも大きな影が目の前に迫っていて
「...これは、」
「ぶつかるわね」
なまえとジュディスがそれをその場の雰囲気に似合わない冷静さで口にすればその直後、船は謎の衝突を起こしてその船体を大きく揺らした。
⇒悩んでる暇もありゃしない
落ち着きを取り戻し衝突の原因をよく見てみれば、それも船であった。だが何倍も大きいその船は見たことのない古い船であった。アーセルム号と書かれた大きな船は世に言う"幽霊船"の類のものを彷彿させた。
「というわけでー、あのアーセルム号を少し探索しに行こうと思う」
言いだしっぺはユーリ。お化けの類を信じている純粋な子どもたちはなんでそうなんたんだ、とユーリを恨みの目で見ている。
「しょうがねえだろ。お呼びなんだから」
ユーリが指さしたのはこの船とあの船を繋ぐ橋という名の大きな鉄板。誰もいないはずのアーセルム号から倒れてきたそれを見てエステルはよ、呼ばれている...と怯えていたのはさっきの話
「それに駆動魔導器も動かねえんだから」
それに加えて衝突のせいなのかこの船の心臓である駆動魔導器が故障をしてしまう。アーセルム号の呪いかもとレイヴンが脅かしてたのもついさっきの話
「私、四人探索、五人見張りのくじを作ってみたの」
いつ作ったのか、準備のいいジュディスが笑顔のまま手を出せばそこには綺麗に小さく折りたたまれたくじと称された紙が九個。嫌な顔をする子どもの手に紙を握らせ、大人たちは自ら紙を手にする。
「探索って書いてあるやつー」
ユーリは自ら手を挙げながら探索のくじを引いた人を確認する
「はいはーい!おっさん探索組ー」
「わ、わたしも、です...」
元気に手を挙げるレイヴン、震えながら小さく手を挙げ怯えているエステル。これで三人。
「あと一人薄情しろー。すぐわかるんだからなー」
あと一人がなかなか手を挙げない。見張りと書かれた紙を手にするジュディスが隣にいたなまえの手元を見た。そこに書かれていたのは
「あとなまえよ」
探索と書かれた紙を握る手をジュディスに掴まれた。何かと思った次にはもうその手は上へ挙げられていた。
「俺にエステルにおっさんになまえか、じゃあそれで行くぞ」
そう言ってユーリは一人先にアーセルム号に足を踏み入れた。それを追うようにエステルが小走りで続く。レイヴンはジュディスに離されたはずの手を未だ下げることのできていないなまえの元へ駆け寄った。
「どうしたのなまえちゃん、青年たち先行っちゃったよ?」
「え、あ、はい。い、行きますよ...。今、行きますよ...。」
どもるなまえはレイヴンの声だけ聞くと手を降ろしくじをジュディスに押し付け足早にアーセルム号に行ってしまう。
「これはまた...」
「いじめないであげてね」
「いじめたりなんてしないわよ!これも愛情表現ってやつよ、ジュディスちゃん!」
そう言うと笑顔でなまえのあとを追い走ってアーセルム号に乗りこむレイヴン。数分後、なまえの初めての悲鳴を聞くことになることを予想しながら、それはもう楽しそうに。